宇宙人の定番「タコ型」「リトルグレイ」 日本の特撮では独創的なデザインのワケ
現在の宇宙人のイメージ「リトルグレイ」の場合は?
続いて“リトルグレイ”について見ていきましょう。リトルグレイ型の宇宙人はスティーブン・スピルバーグ監督の『未知との遭遇』(1977年)や、『宇宙人ポール』(2011年)など海外の映像作品に多く見られます。
日本の特撮作品では、『ウルトラマンティガ』(1996年~1997年)第35話「眠りの乙女」に登場したデシモ星系人がリトルグレイ型と言えるでしょう。墜落した宇宙船から回収され24年のあいだ保管されていた宇宙人で、当初からリトルグレイとしてデザインが発注されたもののようです。
この第35話は『ティガ』放送前年に発表され話題となった『宇宙人解剖フィルム』(1995年)を基にしたエピソードでした。また『ウルトラマンメビウス』(2006年~2007年)に登場したサイコキノ星人カコも、その正体はリトルグレイに似た姿をしています。
特殊な例としては映画『ゴジラ2000ミレニアム』(1999年)に登場した侵略者“ミレニアン”がいます。ミレニアンはタコに似た姿で全身灰色です。前述したタコ型宇宙人とリトルグレイそれぞれの特徴を持っているのです。
結論として、タコ型宇宙人もリトルグレイも日本の特撮作品に登場はしますが、従来のイメージ通りの姿で登場することはあまり多くないようです。
日本の特撮作品に登場する宇宙人の多くは、人が中に入って演じる「ぬいぐるみ」によって表現されるため、“ヒューマノイド型”が主流です。CGや操演などの表現方法もありますが、やはりぬいぐるみの方が効率的かと思われます。タコ型宇宙人やリトルグレイの登場が少ない一番の理由は経済的な問題なのではないでしょうか。
美術監督の池谷仙克(いけや のりよし)さんはファッション雑誌や酒肴などから着想を得て、『ウルトラセブン』や『帰ってきたウルトラマン』に登場する怪獣や宇宙人のデザインを手掛けたと言います。このような自由な発想によって、タコやリトルグレイなどの既存のイメージに縛られない独創的な姿の宇宙人が、日本の特撮作品には数多く登場してきました。
宇宙は広大です。タコ型やリトルグレイのような宇宙人たちは、もしかすると宇宙では少数派なのかもしれません。
(森谷秀)