『北斗の拳』修羅の国に広まる「ラオウ伝説」とはなんだったのか 実は壮大な作り話!
カイオウは憎悪を必要としていた

ラオウへの情愛を消し飛ばしたとはいえ、カイオウの心の中にはまだ憎悪が生まれたわけではありません。実際に、カイオウにとって憎むべき北斗宗家の血を引くケンシロウと遭遇した際には膨大な魔闘気を発していますが、ラオウと面会したときは魔闘気を見せてはいませんでした。
「どうすればラオウを憎むことが出来るのか」この難題に対してカイオウが出した答えは、ラオウ伝説を広めて民衆に希望を与えることだったのではないでしょうか。ラオウに対し希望を持った民衆は、自分たちを苦しめる修羅、中でも筆頭であるカイオウに対して憎悪をたぎらせます。憎悪を力とする北斗琉拳にとっては願ってもない話です。民衆の憎悪を一身に浴びることで、もともと存在していなかったラオウへの憎しみを強引に生み出し、自らの力とするのが目的だった、とすれば、「ラオウ伝説」とはカイオウによるラオウ迎撃のための下準備だったといえるのかもしれません。
しかし修羅の国へとやってきたのはラオウではなく「ケンシロウ」でした。ラオウへの対策は練られているものの、ケンシロウ対策は何も無い状態です。北斗宗家の血を引くケンシロウが宗家の秘拳を習得すれば、カイオウにとっても不測の事態が発生しかねません。事実、カイオウに北斗琉拳を伝授したジュウケイは「カイオウを倒せるのはその秘拳のみ」と語っています。逆にいえば秘拳に目覚める前に倒してしまえば、カイオウにとってもはや何の脅威もありません。そこでカイオウは、妹を殺してヒョウを焚きつけるなど、自ら動くことになったのです。

カイオウにとって、ケンシロウとラオウでいえば、脅威度が高いのはおそらくラオウです。北斗琉拳の創始者であるリュウオウの血を引くカイオウにとって、宗家の血を引くケンシロウは格好の憎悪対象です。実際にケンシロウとの初戦で、カイオウは圧倒的な勝利を収めており、ケンシロウが勝利するには秘拳への目覚めが絶対条件となっていました。ラオウに対しては血が反応しないため、無理やり憎悪を生み出すために「ラオウ伝説」が必要だったのでしょう。
最終的に、ラオウを倒したケンシロウの手によって成し遂げられる形で「ラオウ英雄伝説」は完成し、語り継がれることとなったのです。
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2024年3月19日(火)、『北斗の拳』40周年を記念しコアミックスより刊行が開始されたコミックス『新装版』の、第15巻と第16巻が発売されました。毎月20日に2冊ずつ発売される予定で、各巻の収録話は10年前に刊行された「究極版」と同じです。
またコアミックスのマンガ配信サイト「WEBゼノン編集部」の『金曜ドラマ 北斗の拳』にて、その刊行にあわせ、カイオウの憎悪の源とラオウとの訣別が語られる第202話「憎しみの傷跡!の巻」と第203話「訣別の鮮血!の巻」を、2024年3月19日(火)0時から同年4月1日(月)23時59分までの期間、無料で公開しています。
■WEBゼノン編集部『金曜ドラマ 北斗の拳』
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(早川清一朗)


