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『シティーハンター』「香の死」にファン激怒? 賛否集めた『エンジェル・ハート』が生まれた背景

当初は「リョウと香の子供」が主人公だった

『エンジェル・ハート』1stシーズン1巻(ゼノンコミックス)
『エンジェル・ハート』1stシーズン1巻(ゼノンコミックス)

 では、物議を醸した『エンジェル・ハート』の設定はどのように出来上がっていったのでしょうか。また、最初から「パラレルワールド」として考えられていたものだったのでしょうか。

 北条先生はインタビューで、当初は『シティーハンター』の「続編」を考えていたと語っています。『F・COMPO』連載前に、堀江さんと話し合っていたのは「リョウと香の子供を主人公にした続編」でした。しかし、『シティーハンター』の後、ヒット作がないまま続編を描くことに納得しなかった北条先生は『F・COMPO』を連載してヒットさせます。やがて「コミックバンチ」創刊の運びとなり、再び持ち上がったのが『シティーハンター』の「続編」の企画でした。

 北条先生が描こうとしていたのは、ある少女の成長の物語です。そういう意味では、都市のスイーパーの活躍を描く『シティーハンター』とはまったく異なる物語になるのは自明のことでした。『シティーハンター』連載から10年が経っていたため、リョウと香をそのまま主人公にするという選択肢は最初からなかったといいます。

 しかし、北条先生は頭を悩ませていました。「リョウと香の子供」を主人公にしようとしたものの、香と子供が同じようなキャラクターになってしまっては意味がありません。そして、北条先生は、リョウではなく香を描きたいとも考えていました。

 そのとき、北条先生が別企画として考えていたのが「事故死した妻の心臓を女の子に移植して、夫と女の子が血のつながりのない親子になる話」でした。この設定を使えば、香が死んでしまっても、女の子を通して香の生き方や考え方を描くことができると考えた北条先生は、アニメ『シティーハンター』で香の声を演じた声優の伊倉一恵さんらに許諾を取ったうえで、『エンジェル・ハート』の設定を固めました。

●「続編」でなくなったのはいつ?

「コミックバンチ」創刊時、堀江さんからは別企画を依頼されていたそうですが、北条先生のほうから『エンジェル・ハート』の企画を持ち込んだそうです。この時点で、北条先生のなかでは「続編」ではなく「セルフリメイク」になっていました。「リョウと香の子供」が主人公ではなくなった時点で「続編」ではなくなったと考えるべきでしょう。

 しかし、連載が始まると、混乱してしまう読者が続出しました。当時について北条先生は次のように振り返っています。

「連載スタート時に出版社が『続編』と謳ってしまったものだから、話がややこしくなってしまったんですけど、『シティーハンター』とは設定が違う別の世界の話なんです。それを説明しようと思ってパラレルワールドという言葉を使ったら、ますます誤解を招いてしまって(笑)。要は作者自身によるセルフリメイクなんですよね」(ダ・ヴィンチWeb「『シティーハンター』から『エンジェル・ハート』完結まで!冴羽?が見守った32年間【インタビュー】」2019年3月1日)

『シティーハンター』の設定を使って、香の心臓を受け継いだ少女の成長と10年後のリョウたちの姿を描いた物語が『エンジェル・ハート』ということでしょう。『ルパン三世』第1シリーズと、年を重ねたルパンを描いた『ルパン三世 カリオストロの城』の関係が近いのかもしれません(『カリオストロの城』も公開時に「これはルパンではない」という批判にさらされていました)。

『シティーハンター』の「続編」ではなく「セルフリメイク」であり「パラレルワールド」であることを明確にした『エンジェル・ハート』は、香の存在やリョウと香の関係性に思い入れを抱いていたファンには受け入れがたい作品になったかもしれませんが、新たな読者を獲得してドラマ化、アニメ化もされるほどの人気作品になりました。

 それはそれとして、新作のアニメ映画や実写化などの企画が動いている『シティーハンター』で、リョウと香の関係のその後が見たいというファンの気持ちも大切にされるといいなと思ってしまうのです。

※冴羽リョウの「リョウ」は、正しくは「けものへん+うかんむりなしの寮」。

(大山くまお)

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