「これなら完結させられる」と実感！　連載再開から2年『ベルセルク』監修・森恒二先生インタビュー【前編】

ガッツの「顔」には正解がない？

　2021年5月6日に作者の三浦建太郎先生が急性大動脈解離で亡くなり、未完になるかと思われた大人気ダークファンタジーコミック『ベルセルク』は、三浦先生の高校時代からの盟友で、完結に至るまでの全てのストーリーを聞いていた漫画家、森恒二先生が監修を務め、三浦先生のお弟子さんたちが所属する「スタジオ我画」が作画を務める形で、2022年6月24日に「ヤングアニマル」で連載が再開されました。2023年9月29日には最新42巻も発売され、現在もますます注目を集めています。

　2024年の10月25日（金）には、「ヤングアニマル」21号に『ベルセルク』の最新話が掲載予定です。連載再開から2年以上経った今、完結に向かって一歩ずつ進んでいる『ベルセルク』にかける思い、今後の展望、改めて思い出される三浦先生との思い出などを、監修の森恒二先生に聞きました。

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――2022年6月に『ベルセルク』の連載が再開されてから、2年が経ちました。森先生もご自身の連載を抱えながら監修をされていますが、この2年で特に苦労された点などはありますか。

森恒二先生（以下敬称略）　苦労のほとんどは、スタジオ我画の方々の方が多いと思います。自分は三浦君から聞いた『ベルセルク』の構想をなるべく細部まで思い出して伝えるだけなので、そこまで大きな苦労はしていません。

　ただ、あくまで記憶に頼っている部分が大きいので、原稿ができてから大事なことを思い出してしまうことも割とあるんです。なるべく『ベルセルク』元担当の島田さんと話すようにしています。

　三浦君のことは無意識に思い出すことが多いですし、私としても何かにつけて思い出すようにしています。そうすると、「ああ、こんなこと言っていた」と気づくことがあります。そうして思い出したことを、スタジオ我画のエースの黒崎君に話していますね。黒崎君も三浦君から聞いていた情報があるので、互いに答え合わせをしながら『ベルセルク』を作っていくことにしています。

――お話を聞くと、やはりスタジオ我画のスタッフの方の苦労は、尋常ではなさそうですね。

森　やはり、作画の力がすさまじく、日本一、世界一の描き手と言われていた三浦君の後を引き継ぐわけですから、プレッシャーは半端ではないと思います。ただ、黒崎君は本当にすごい才能の持ち主で、連載再開からどんどん進化しているのを感じます。相当の努力をされていると思います。

――三浦先生の絵に近付いてきている、ということでしょうか。

森　もともと、黒崎君と三浦君の絵柄は近かったんですよ。だからこそ、三浦君も黒崎君を作画スタッフのメインに置いていました。そして、黒崎君も『ベルセルク』のアシスタントをしているうちに、三浦君の絵柄に近付いていったと思います。

　黒崎君は、『ベルセルク』の女性キャラが特に得意で、ファルネーゼやシールケは完璧に近いですね。ただ、ガッツや「四角い」雰囲気のおじさんキャラは三浦君の絵柄に寄せにくいと感じています。黒崎君の描くキャラクターは細身でスタイリッシュなので、ガッツが細くならないように「もうちょっとゴツくしてくれ」とお願いしたことはありました。

　その一方で、黒崎君はグリフィスを描くのが凄くうまいんですよ。三浦君に引けを取らないくらいのクオリティだと思います。ゾッとするくらい美しい時もありますね。逆に三浦君は「現人神」のように神々しいグリフィスを描くのが苦手だったみたいで、出てくるたびによく悩んでいました。

――ただ、今の連載ではちょうどガッツがいつもより弱っている状態でもありますね。

森　実は、三浦君が描いていたとき、ガッツの顔はよく変わっていたんです。いきなりガッツが若返ることもあって、「妖精島」のエピソードの前も若くなっていましたし、面長になることもありました。三浦君本人も、「わざとじゃないけど変わっちゃうんだよね」と言っていました。

　だから、これが「ガッツの姿形だ」っていうのも、決めづらいんですよね。ただ、三浦君は「断罪の塔」のエピソードのガッツが、大人になってからのガッツのなかでは気に入っていたみたいです。