急増する「盗作トラブル」 創作物における著作権侵害の線引は? 弁護士に訊いた
創作物の著作権はどの程度認められるのでしょうか。またどこまでが模倣で、どこからが盗作なのでしょうか? 画像生成AIによる創作物を含めて、法律に基づく正しい知識を弁護士に聞きました。
誰もがクリエイターになれる時代だからこそ発生するトラブル

先日、『美少女戦士セーラームーン』や『少女革命ウテナ』等の人気作を手がけたアニメ監督・幾原邦彦さんが、SNSを通じて「見に覚えのない盗用」の抗議が寄せられていたという報道がなされ、話題を集めました。
インターネットやSNSのおかげで創作発表の場が広がり、また創作者と直接繋がれる環境になったことで、著作権に関わるトラブルが近年急増しています。
そこで著作権侵害の線引きや注意点について、弁護士法人 内田・鮫島法律事務所の弁護士でデジタルハリウッド大学客員准教授の高瀬亜富さんに聞きました。
●そもそも「盗作」ってなに?
――近年、SNS上でイラストを盗作されたとか、逆に身に覚えのない指摘を受けたといったトラブルが発生しています。そもそも「盗作」とは法律的にどのように定められているのでしょうか。
高瀬:実は「盗作」は法律上の概念・用語ではないため、明確な定義がありません。他人の「作風」を模倣するのは合法ですが、世間ではこうした適法な模倣も含めて広く「盗作」と表現されるケースもあります。
――では、どこからが「いわゆる盗作」なのでしょうか。
高瀬:「盗作」が違法となる場合の典型例は、著作権侵害が成立する場合です。著作権侵害が成立すると、民事上は損害賠償請求や盗作した作品の利用差止請求を受けることになります。また、刑事上は、個人による著作権侵害の場合は最大で十年以下の懲役もしくは千万円以下の罰金、又はその双方が課される可能性があります。
――盗作するつもりはなく、それどころか模倣したつもりもないのに、たまたま第三者の創作物と似てしまった場合は著作権侵害になりますか?
高瀬:たまたま第三者の創作物と似てしまった場合、著作権侵害は成立しません。著作権は著作物の創作と同時に発生するものであり、また、特許権等と異なりその存在を公示する制度等はないので、偶然第三者の創作物と似た作品を創作してしまうという事態を排除できないためです。
そのため意図的に第三者の創作物を模倣した場合に限って、著作権侵害が成立するものとされています。法律的には、第三者の創作物に「依拠」している場合でない限り著作権侵害は成立しない、と表現されます。この「依拠」の要件はAIと著作権侵害に関する問題を考える時に重要です。