衝撃だった実写『デビルマン』公開から20年 「最終決戦」は想像をこえて伝説に?
感動の名作ではないものの、観た人の記憶に強烈に残る映画があります。そのひとつが、2004年に劇場公開された実写版『デビルマン』です。もともと実写化は難しいと言われていた原作マンガですが、完成した作品は想像以上にすごい出来でした。多くの観客がスクリーンにツッコミを入れた、実写版『デビルマン』の伝説を振り返ります。
2004年度の「最低映画」賞を受賞
これまで数多くの人気マンガが実写映画化されてきましたが、原作ファンと映画ファンの双方に衝撃を与えた作品として知られているのが、東映配給、那須博之監督による映画『デビルマン』(2004年)です。
永井豪氏が1972年から73年に「週刊少年マガジン」(講談社)で連載した『デビルマン』は、地球の先住民族である悪魔(デーモン族)と人類が、お互いの存亡を懸けて戦うというスケールの大きなSFマンガです。ヒロインである牧村美樹が、「魔女狩り」を叫ぶ自警団に襲撃されるなどのショッキングなシーンも盛り込まれた、カルト的な人気を誇るコミックです。
予定されていた公開日を半年遅らせ、完成度を高めた実写版『デビルマン』でしたが、制作費10億円に対し、興収は5.2億円。その年の最低映画を決める「文春きいちご賞」では、紀里谷和明監督の『CASSHERN』(2004年)を抑え、第1回作品賞に選ばれるなど、評価面でもさんざんな結果に終わっています。
2024年10月9日(水)は、映画館に足を運んだ観客を騒然とさせた劇場公開から20年の節目になります。実写版『デビルマン』が残した伝説を検証します。
亀戸のショッピングモールで起きる「世界滅亡」
実写版『デビルマン』の何がすごいかといえば、「人類vs悪魔」という壮大なスケールの物語なのに、東京亀戸のショッピングモールが主要なロケ地となっている点です。「世界滅亡の危機が、亀戸を中心に起きている」というスケール感の小ささに、まず驚かされます。
亀戸だけではさすがに地球規模の危機感は伝わらないと、製作陣も思ったのでしょう。ニュースキャスター役のボブ・サップが、世界各地で異変が起きていることを伝えます。プロ格闘家のボブ・サップにキャスターをやらせるという奇抜なアイデアですが、違和感が強すぎて何をしゃべっているのか頭にまるで入ってきません。
主人公の不動明、その親友の飛鳥了に抜擢されたのは、映画初出演となる伊崎央登さん、伊崎右典さんの兄弟です。なぜ双子の兄弟を主演に起用したのかという謎ですが、那須監督によると「善と悪、陽と陰、一対の関係」を表現したかったそうです。残念ながら、監督の意図は観客にはほとんど伝わらなかったように思います。明が「あー、俺 デーモンになっちゃったよ」と抑揚なく口にするシーンは、見直すたびに肌に粟(あわ)を生じるような戦慄(せんりつ)を覚えます。
那須監督は東京大学経済学部出身で、人気マンガを原作にした実写映画『ビー・バップ・ハイスクール』(1985年)をヒットさせ、シリーズ化に成功しています。大変な情熱家で、本当のヤンキーたちが集まった『ビー・バップ』の現場をうまくまとめあげたと言われています。しかし、ヤンキー映画と違って、特撮やCGの多い『デビルマン』では、那須監督のよさを発揮することはできなかったようです。