「ファミコン裏技」の真実とウソ シンシアの野球拳とバキュラ256発「くっ、騙された…!」
ファミコンに関連する都市伝説は数多くあります。そのなかでも「裏技」に関するうわさ話は、多くのゲームファンが惹かれました。果たしてどんな都市伝説が、当時話題となったのでしょうか。
都市伝説級の「ファミコンの裏技」とは?

世の中には、いまも昔もさまざまな都市伝説が広まっています。信憑性が高そうなものから信じがたいオカルトめいたうわさまで、その数は把握しきれないほど膨大です。
都市伝説のなかには、ファミコン時代に流行した「裏技」も多数あります。当時のファミコン少年たちが信じ、そして裏切られた「裏技」のなかでも、特に衝撃的だったものをご存じでしょうか。
●『ゼビウス』の「バキュラ」は壊せる?
名作シューティングゲームとして知られる『ゼビウス』は、空中攻撃用のショット「ザッパー」と、対地攻撃の「ブラスター」を使い分け、高速で飛行する敵機や巨大要塞「アンドアジェネシス」などの敵に立ち向かうゲームです。
ただし、「バキュラ」と呼ばれる飛行物体だけは決して破壊できず、ぶつかってもこちらが一方的にやられるだけ。避けるしかない……と誰もが思っていた矢先、「ザッパーを256発打ち込むとバキュラは壊せる」といううわさが聞こえてきました。
「バキュラ」は画面下に向かって飛行しているため、256発撃ち込むのは至難の業で、試してもとても規定数には届きません。しかし、「自分でやっても無理だった」という結果は、「誰かなら可能かも?」という予想や希望にすり替わり、うわさは消えることなく長く残り続けました。
しかし実際には、仮に256発撃ち込めても、「バキュラ」の破壊はプログラム上不可能です。『ゼビウス』の開発に携わった遠藤雅伸氏も、ごく初期の頃に誤解を招きかねない発言もありましたが、後にそのコメントを訂正し、自身のブログや『ゲームセンターCX』に出演した際など、さまざまな形で「バキュラは壊せない」と明言しています。
絶対に壊せないモノだからこそ、「壊してみたい」という想いが膨らみ、この都市伝説は広まってしまったのかもしれません。
●『水晶の龍』のヒロインと「野球拳」ができる?
「『ゼビウス』の「バキュラ」は壊せる」と並ぶほど有名になったのが、「『水晶の龍』(すいしょうのドラゴン)のヒロインと「野球拳」ができる」という都市伝説です。
『水晶の龍』は、スクウェア(現:スクウェア・エニックス)のブランド「DOG」からリリースされたコマンド選択型のアドベンチャーゲームです。ファミコンの周辺機器「ディスクシステム」向けに登場し、アニメーションを盛り込んだ演出が当時話題となります。
作中では、ヒロインの「シンシア」がこちらに向かって手を伸ばす場面があり、この時に「野球拳ができる」という裏技が当時広まりました。しかも、勝利すれば彼女が衣服を脱ぐというおまけつきで。『水晶の龍』はグラフィックに定評があったため、この裏技への期待は大きく膨れ上がりました。
しかし、この裏技はうそで、実際のところ『水晶の龍』で「野球拳」はできません。もちろん「シンシア」の脱衣もなく、どれほど躍起になっても実現不可能でした。
このうわさが広まった理由は明白で、当時発売されていた「ファミリーコンピュータMagazine」の誌上で、この裏技が紹介されたのがきっかけでした。脱衣シーンの画像付きだったため、多くの人がそれを信じ、そして裏切られてしまったのです。
ただし、『水晶の龍』で「野球拳」ができるという裏技が紙面で紹介されたのは、多くの裏技とともにひとつだけ「ウソ技」を盛り込んで紹介するという、「ファミマガ」独自のオリジナルコーナーのなかでした。
つまり、紙面上でうそが語られたわけではなく、うそを見抜いて楽しむという主旨のコーナーだったのです。しかし、多くの読者がまんまと騙されてしまった……それがこの都市伝説の背景でした。
うその可能性があると知っていても信じてしまったのは、それだけ「ウソ技」が魅力的だったからなのでしょう。
(臥待)