デビュー前から才能の片鱗が… 『ワンピ』『こち亀』作者が見いだしていたジャンプ漫画家
大ヒットを生み出した人気漫画家のなかには、デビューする前から絵のうまさやデザインセンスが光っていた人がいます。意外な実績を残していた漫画家たちのアマチュア時代を振り返りました。
最終話で感動のコラボレーションも!

名だたる漫画家たちのなかには、デビュー前から才能の片鱗を見せていた人たちがちらほら見受けられます。マンガの読者投稿コーナーやキャラクター募集企画などを振り返ると、貴重なデビュー前のイラストが残されていました。
例えば世界累計発行部数1億部以上を誇る『僕のヒーローアカデミア』の堀越耕平先生は、デビュー前から大の『ONE PIECE』ファンとして知られています。
高校時代にはコミックス巻末に掲載されている読者投稿イラストコーナー「ウソップギャラリー海賊団」にイラストを投稿し、その作品が単行本23巻で採用されました。「白猟のスモーカー」と書かれた渋い「スモーカー」のイラストで、作者の尾田栄一郎先生から「手強い男」とコメントされています。
やがて堀越先生はプロの漫画家となり、尾田先生にイラストを採用してもらったお礼を直接伝えることができたそうです。さらに『ヒロアカ』が完結を迎えた「週刊少年ジャンプ」2024年36・37合併号では、尾田先生が『ONE PIECE』の扉絵で、堀越先生のスモーカーの絵を自らリメイク。最終話に華を添えたことで、「エッッッモ」「こんなん泣いてまうて」「すごく粋な計らい」などと話題を呼びました。
そんな堀越先生のように、アマチュア時代に功績を残している漫画家は少なくありません。同じような読者投稿型のコーナーでいえば、「To LOVEる-とらぶる-」シリーズや『BLACK CAT』などで知られる矢吹健太朗先生もデビュー前に採用された実績があります。
当時まだ15歳だった矢吹先生が投稿したのは、「週刊少年ジャンプ」誌上で行われたアニメ『ドラゴンボールZ』の「夢のフュージョン」を募集する企画でした。矢吹先生は、孫悟飯と青年トランクスのフュージョン「ゴハンクス」を投稿し、「カッコイイで賞」を受賞しています。矢吹先生は後に自身のX(旧:Twitter)で、同賞について「それが一つの自信となり、数年後にマンガ賞に投稿する行動につながった」と語っていました。
ちなみにその漫画賞というのが、当時の新人漫画募集企画だった「天下一漫画賞」です。そこで矢吹先生は、審査員のひとりだった『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の秋本治先生に才能を見出され、現役高校生にして漫画家デビューを果たしました。秋本先生の審美眼がなければ、「矢吹神」は誕生しなかったかもしれないと思うと感慨深いですね。
そのほかゲームの新キャラ募集企画で、頭角を現したのが村田雄介先生です。『アイシールド21』や『ワンパンマン』の作画で知られる村田先生は、卓越した画力はさることながら、キャラクターデザインにおいても早くから才能を発揮していました。
まだ村田先生が小学6年生だった頃、『ロックマン3 Dr.ワイリーの最期!?』のボスキャラ募集企画に応募し、採用こそされなかったものの、佳作を受賞しています。しかし本人はこれで満足することなく、中学時代にも『ロックマン4 新たなる野望!!』と『ロックマン5 ブルースの罠!?』で実施された同じ企画に挑戦しました。
今度は両方でデザインが採用され、『ロックマン4』では「ダストマン」、『ロックマン5』では「クリスタルマン」がゲーム内に登場しています。特にダストマンに関しては、ほとんど手直しされておらず、それだけ村田先生の画力とデザインが秀逸だったことがうかがい知れるでしょう。
『ONE PIECE』作者の目を引くイラストを描いた堀越先生にしろ、『こち亀』作者に才能を見出された矢吹先生にしろ、ヒット作を世に送り出した漫画家たちは、素人時代から才能にあふれていたようです。
(ハララ書房)