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「ガンダムじゃん!」といわれた防衛装備庁の「X-2」 なぜ目に鮮やかな塗装なの?

かつて「心神」の名で知られた防衛装備庁の先進技術実証機「X-2」は、その登場時、「ガンダムじゃん!」「コアファイターか!」と話題になりました。理由はその見た目、白青赤の実に鮮やかな機体塗装だったからです。

「ガンダム」を彷彿とさせる派手な機体色がたまらん!

先進技術実証機「X-2」 (画像:防衛装備庁)
先進技術実証機「X-2」 (画像:防衛装備庁)

 モビルスーツ(MS)RX-78-2、「アムロ・レイ」が搭乗した「ガンダム二号機」は、かなり派手な塗装が特徴的です。白青赤黄と、宇宙でも地上でも目立つような配色になっています。

 一般的に、軍用機は戦場での視認性を下げるために迷彩塗装が施されるものです。例えば、現代の戦闘機は灰色や黒に近い色合いが多く、これにより遠距離からの視認を困難にしています。またその地域の特色に合わせる場合もあり、青色を基調とした洋上迷彩であったり、森林や砂漠に適した迷彩が施されたりする場合もあります。「ガンダム」は、兵器として考えるとかなり異例であることがわかるでしょう。実際、このような塗装が施された例はあるのでしょうか。

 航空機の歴史において、しばしば新たな機体の登場が世間を驚かせてきました。特に、試作機や実証機のような特殊な機体は、先進技術の粋を集めた結果、既存の戦闘機とは異なる特異な外観を有していたり、派手な塗装が施されていたりすることが多いようです。

 その一例に、日本の先進技術実証機「X-2(心神)」が挙げられるでしょう。この機体が初めて公の場に姿を現した際、多くの航空ファンから「ガンダムじゃん!」「コアファイターか!」という声が上がりました。その理由は、X-2の塗装が白を基調とし、尾翼や主翼は赤色、胴体には青いストライプが施されており、MS「ガンダム」のイメージと重なるものだったのです。

 X-2は日本の防衛省技術研究本部(現・防衛装備庁)と三菱重工業を中心とした国内企業が開発した「先進技術実証機(ATD-X)」です。2016年に初飛行を果たし、ステルス性と高い運動性といった次世代戦闘機技術の確立を目的とした試験が本機を用い実施されました。

 X-2の役割はあくまで「実証機」であり、戦闘機として実戦配備されることを前提としたものではありません。このため、機関砲やミサイル類、火器管制レーダーなどは搭載されていませんでした。塗装に関しても、実戦環境での迷彩効果よりも、むしろ実験機としての識別性や研究目的が重視されたのです。

 航空機の試験機やデモンストレーターは、一般的に鮮やかな塗装が施されます。これは、試験中の機体を容易に視認できるようにする目的や、メーカーのデザインを強調するためです。例えば、アメリカのNASAが保有していたF-15S/MTDと呼ばれる機動実証機も、白青赤の目立つ塗装となっています。X-2の「ガンダムのような」塗装は、軍用機としては異例でしたが、実証機としての性格を考えれば合理的なものだったのです。

 X-2は2018年にすべての試験飛行を終了し、その後地上保管されていると考えられています。試験終了後、一部の航空ファンによって目撃情報が報告されているものの、公式にはその具体的な保管場所や今後の運用計画は明かされていません。

 X-2で培われた技術は現在、日本、イギリス、イタリアの3国で共同開発が進んでいる次世代戦闘機「GCAP」開発へと受け継がれます。ガンダムと比較されたこの機体は、日本の航空技術の象徴として、歴史に名を刻むことになりました。

(関賢太郎)

【画像】こちら未採用なのにメチャ知られてる幻のステルス試作機「YF-23」です(4枚)

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