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最終回だけ異様にシリアス? 『ハクション大魔王』らしからぬアニメの意外な結末

数あるアニメのなかには、その作風らしからぬ意外な最終回を迎える作品があります。1969年に放送されたアニメ『ハクション大魔王』もそのひとつです。本作といえばタツノコプロの人気ドタバタギャグコメディとして知られていますが、ラストは意外な結末を迎えました。

多くの人が涙した伝説の最終回

画像は『ハクション大魔王』アニメビジュアル (C)タツノコプロ
画像は『ハクション大魔王』アニメビジュアル (C)タツノコプロ

「最終回だけ急にこんなんずるい」
「さようならドラえもんと同レベルで泣ける」

 これらの反響は、アニメ『ハクション大魔王』の最終回に対するネット上のコメントです。本作といえば、タツノコプロを代表する人気ドタバタギャグコメディとして有名ですが、実は「最終回が泣けるアニメ」でもあります。多くの視聴者が涙したという、伝説の最終回を覚えていますか?

 アニメ『ハクション大魔王』が初めてTVに登場したのは、1969年10月のことです。それからおよそ1年間にわたって放送されていましたが、当時は『オバケのQ太郎』や『ドラえもん』など風変わりな同居人が押しかけてくる、いわゆる「居候アニメ」が親しまれていた時代でした。そのなかでも『ハクション大魔王』は「半裸のオッサン」という尖った同居人キャラの造形で人気を集めることとなります。

 ハクション大魔王はクシャミをすると「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!」と魔法のつぼから飛び出し、呼び出した人の願いを叶えてくれる魔人です。ところがとんでもなくドジな魔王は、つぼの持ち主となった小学生の「与田山カンイチ」、通称「カンちゃん」の命令にいつも失敗してばかりです。さらにイタズラ好きな魔王の娘「アクビちゃん」も加わり、さまざまな珍騒動を巻き起こしていきます。

 そうしたドタバタ系のコメディ作品だったのですが、最終回では一転してシリアスな結末を迎えました。第52話のAパート終盤で、魔王は号泣しながらカンちゃんに別れを切り出します。次に誰かがクシャミをしてつぼのなかに帰ったが最後、魔王は100年間の眠りにつかねばならないというのです。

 そこでカンちゃんたちはつぼを金庫に隠したり、クシャミをしないように口をテープで塞いだりとさまざまな対策を講じました。しかしBパート「さよなら大魔王の話」では努力の甲斐も虚しく、運命の力によってカンちゃんはクシャミをしてしまいます。

 涙ながらに「カンちゃん、魔法の力なんか借りなくても自分のことは自分でやるでごじゃるよ。それを楽しみにしてます」と別れの言葉を残す魔王、泣きじゃくりながら魔王を必死に追いかけるカンちゃん。ドラえもんのように最終的に帰ってきました……などの展開もなく、そのまま物悲しい雰囲気のまま物語は幕を閉じるのです。『ハクション大魔王』らしからぬ最終回には、当時多くの人が衝撃を受け、涙を誘われたのではないでしょうか。

 ちなみに2020年には、現代の東京を舞台にした新作アニメ『ハクション大魔王2020』が放送されました。本作では王位を継ぐための修行として、アクビちゃんがカンちゃんの孫「与田山カン太郎」の元へやって来ます。

 ハクション大魔王はもちろん、アクビの弟「プゥータ」まで登場し、令和ならではのドタバタ劇を繰り広げていくのですが、最終回はやはりアクビちゃんがつぼのなかに帰ってしまいます。カン太郎はアクビちゃんとの結婚式を夢見るほど彼女に恋心を抱いていたので、より一層切ない別れとなりました。

 楽しい時間はいつまでも続きません。最後の最後で『ハクション大魔王』は、人生の厳しさを教えてくれたように感じます。

(ハララ書房)

【画像】え、美女化しすぎじゃ… こちらが令和版『ハクション大魔王』アクビちゃんです(3枚)

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