マグミクス | manga * anime * game

セイラ失禁にアムロと肉体関係…『ガンダム』小説版で描かれた「人間くささ」の真髄

富野由悠季監督自身が執筆した小説版『ガンダム』は、TVアニメとはまったく別の物語として展開されています。セイラとアムロの濡れ場などTVでは描けなかった生々しいリアルが詰まった「もうひとつのガンダム」に迫ります。

なぜTV版とこんなに違う?

『機動戦士ガンダム I』 著:富野由悠季/イラスト:美樹本晴彦(KADOKAWA)
『機動戦士ガンダム I』 著:富野由悠季/イラスト:美樹本晴彦(KADOKAWA)

※本稿には、小説『機動戦士ガンダム』に関するネタバレを含みます。ご了承のうえ閲覧下さい。

 富野由悠季監督が生み出した「ガンダム」シリーズは、いまなお新たな物語が作られ続けています。そんな本シリーズは、アニメだけでなく小説でも展開されており、富野監督自身によって書かれた作品もあります。

 1979年、TVアニメが放送された同じ年に刊行された小説版『機動戦士ガンダム』は、全3巻からなる長編小説です。その内容はTVアニメの原作ではなく、物語としてのつながりもありません。むしろ、随所に小説オリジナルの展開が挿入される「別の物語」として紡がれています。現在放送中で話題の『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』の重要人物である「シャリア・ブル」の出番もTVアニメ版よりも多かったりします。

 さらに主人公「アムロ・レイ」とヒロインのひとり「セイラ・マス」のベッドシーンが描かれるほか、最後にアムロが死ぬという結末など、読者に衝撃を与える要素が満載です。

 なぜ、TVアニメの監督が書いているにもかかわらず、こんなにも異なる内容になっているのでしょうか。

●戦場の厳しさをより直接に伝える小説版

 小説版『機動戦士ガンダム』は、TVアニメ版と比較して、全体的に血なまぐさい描写が多いです。「ガンダム」シリーズは本来、戦争を描くものなので、血なまぐさい描写があるのは当然と思えますが、やはり子供も見るTVアニメという形式では放送コードのことを考慮しないわけにはいきません。深夜放送ではなく夕方の放送だったこともあり、直接的な残酷描写は、今のTVアニメと比べて控え目です。

 そんな制約を取り外したかのような描写が小説版では目立ちます。生々しく人の犠牲がはっきりと描かれるのです。例えば、以下のような焼死体を強烈に描写する内容も衝撃的です。

「焼けた木と思えたものの表面が剥げた。そこには肉の色があった。サーモン・ピンクと毛細管の浮き出た美しくなまめかしい肉の色だった。アムロの脚が焼死体の背中の皮を剥いたのだ。真っ黒に炭化した皮膚の下になぜこんな美しい色があるのだと思いながらも、嘔吐感が襲い、アムロは危うく堪えて走った」(1巻、P50)

 戦場の恐ろしさが伝わる文章です。こうした描写が端々に現れるのが小説版ガンダムであり、TVアニメ版以上に戦場のリアルが追及されていると言えます。

 その点で、この小説版には戦争という愚かな人の営みを厳しく伝えていこうという意思を強く感じます。そのなかで、人類の進化であるニュータイプの重要性がことさらに浮かび上がってきます。どうして、人類はより進化しないといけないのか、愚かな営みの代名詞である戦争の生々しい描写を入れることで、その説得力が増していると感じられるのです。

【画像】えっ、失禁してる…こちらが小説版『ガンダム』で衝撃シーンが描かれた「セイラさん」です(5枚)

画像ギャラリー

1 2