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74年の特撮『ノストラダムスの大予言』 ヒットするも子供たちは人類滅亡に恐怖して…

文部省推薦映画が「封印映画」に

原作『ノストラダムスの大予言―迫りくる1999年7の月、人類滅亡の日』(祥伝社)
原作『ノストラダムスの大予言―迫りくる1999年7の月、人類滅亡の日』(祥伝社)

 映画『ノストラダムスの大予言』は、『日本沈没』で総理大臣を演じた丹波哲郎さんが主演し、劇場アニメ『宇宙戦艦ヤマト』(1977年)を大ヒットさせる舛田利雄監督が撮り上げた夏休み大作でした。文部省推薦映画として公開されています。1974年の邦画の興収トップは前年末に公開された『日本沈没』で、『ノストラダムスの大予言』はそれに次ぐ好成績を収めています。東宝制作のパニック映画がその年の興収上位を独占したのです。

 ある種のリリシズムさを感じさせる『日本沈没』とは違い、映画『ノストラダムスの大予言』には物語性はありません。代々にわたってノストラダムスの予言書を研究してきた環境学者(丹波哲郎)が、人類滅亡の危機が迫っていることに警鐘を鳴らす、という内容です。公害が原因で奇形児が生まれ、放射能を浴びたニューギニアの原住民たちは食人鬼化、オゾン層の破壊によって東京上空が巨大な鏡になるなどの、ショッキングなシーンの数々で構成されていました。

 冨田勲さんの不気味なテーマ曲、予言書を読み上げる岸田今日子さんのおどろおどろしいナレーションも忘れられません。

 映画『ノストラダムスの大予言』は1980年にテレビ朝日系でTV放送されていますが、被曝者の描写シーンなどが問題視され、日本ではソフト化されずにいます。輸入版ビデオ、もしくは海賊版ビデオが出回る「封印映画」として知られています。

今も消えない、ノストラダムスの暗示

映画『22才の別れ Lycoris 葉見ず花見ず物語』
映画『22才の別れ Lycoris 葉見ず花見ず物語』

 映画の公開から25年後、ついに1999年7月を迎えました。幸いなことに人類は滅びずに済み、現在に至っています。1999年7月1日の朝日新聞(夕刊)には五島氏が、「(予言は)まさに回避するための警告だった。人間の意思で、精密な予言も押し返せる。もし、本を読んでいまでも心を痛めている人がいたら、謝りたい」とコメントを寄せていました。子供の頃に予言に振り回された世代は、脱力感を覚えたのではないでしょうか。

 大林宣彦監督の映画『22才の別れ』(2007年)に興味深いシーンがあります。商社マンの川野(筧利夫)、同じ会社に勤める有美(清水美沙)は、それぞれ43歳と37歳で、共に独身。ふたりは焼き鳥屋で大将(長門裕之)に向かって、子供の頃に『ノストラダムスの大予言』が流行したことを語ります。

 1960年代に生まれた世代は、『ノストラダムスの大予言』の影響で未来を悲観するようになり、そのため非婚率や少子化率が高い。予言の暗示にかかってしまった、というのです。非婚率の高さや少子化の原因が、すべて『ノストラダムスの大予言』にあるとは言えませんが、多感な時期に影響を与えたことは確かでしょう。

 1999年7月に人類は滅亡せずに済みましたが、経済格差はますます激しくなり、大きな災害や疫病が相次いでいます。希望が感じられる未来を、若い世代に受け渡すこと。それが、唯一『ノストラダムスの大予言』の暗示を解く方法なのかもしれません。

(長野辰次)

【画像】子供たちも本気で怯えた! 社会に影響与えた「滅亡」映画作品(6枚)

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