『ばけばけ』の明治時代は「心霊ブーム」だった? 八雲が会った「妖怪博士」は登場するか
日本各地の妖怪を求めて回った柳田国男

小泉八雲は1904年(明治37年)に亡くなっていますが、1910年(明治43年)には柳田国男が『遠野物語』を出版し、東北地方でカッパ、座敷わらじ、天狗などに出会った人たちの逸話を書き記しています。日本民俗学の祖である柳田国男は、八雲と同じように、文明開化が進むことによって妖怪たちの存在が人びとの記憶から消えていくことを懸念したのです。
柳田国男が民俗学を始めていなければ、水木しげる氏の『ゲゲゲの鬼太郎』や、諸星大二郎氏の『妖怪ハンター』などの人気マンガは生まれていなかったかもしれません。少なくとも、日本の「妖怪学」は今とはずいぶん違ったものになっていたでしょう。山田杏奈さん、森山未來さんらが出演した映画『山女』(2023年)も、『遠野物語』に着想を得た作品となっています。
八雲より25歳年下の柳田国男ですが、早稲田大学で同時期に講師として教壇に立っていたことがあります。考え方のよく似たふたりだけに、交流があってもおかしくなかったはずです。妖怪マニア同士の交流エピソードも、ぜひ『ばけばけ』で見たいものです。
世界を震撼させた「日本発ホラー映画」のモチーフに
1910年には「千里眼事件」も起きており、新聞がセンセーショナルに報じています。透視能力の持ち主と熊本で評判となっていた御船千鶴子が上京し、この年に公開実験が行われます。しかし、多くの科学者や記者たちが集まるなかで行われた実験は、うまくいきませんでした。翌年、千鶴子は24歳という若さで自死を遂げることになります。
明治末期に起きたこの悲劇をモチーフに、作家の鈴木光司氏が1991年に発表したのがホラー小説『リング』です。1998年には松嶋菜々子さん、真田広之さん主演映画として中田秀夫監督が実写化し、大ヒットを記録。さらに『リング』はシリーズ化され、「Jホラー」として世界各国へと広まっていったのです。
山や川、海の自然に恵まれ、八百万の神たちと暮らしてきた日本人は、昔から妖怪たちとも共存してきたのかもしれません。急激に文明が進んでいった明治時代は、さまざまなハレーションが起きた時代でもあったようです。
トキとヘブンの目線を通し、明治時代の「ばけばけ」たちはこれからどのように語られ、描かれていくのか、注目したいと思います。
(長野辰次)


