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アニメ『ベルサイユのばら』 最終回1話前での「つづく」に絶望した思い出

総監督の交代を乗り越えて

 さて、『ベルサイユのばら』は当初『超電磁マシーン ボルテスV』などで知られる長浜忠夫氏が総監督を務めていました。これは『ボルテスV』が身分制度や社会的抑圧からの解放を描いた作品であり、フランス革命を舞台とした作品に適していると考えられたためだと言われています。

 しかし長浜総監督は、オスカル役の声優である田島令子氏と演技面をめぐる対立があり12話で降板してしまいます。近年のインタビューで田島氏はこのときのことを「オーバーアクションを要求されたりして、少し困ったこともありましたね」と語っており、長浜総監督の求める演技と田島氏が目指した演技に相違があったことを認めています。とはいえ長浜氏もエネルギッシュなキャラクター演出に定評のある超一流のクリエイターです。良い悪いではなく、作品を作り上げていくなかで互いにどうしても譲れない一線が交錯してしまった、やむを得ない降板劇だったのでしょう。

 その後しばらく総監督のいない時期が続きますが、19話「さらば妹よ!」から『エースをねらえ!』『宝島』『ガンバの大冒険』など数々の名作を手掛けた出崎統氏が就任し、ガラリと作風が変化します。出崎氏はキャラクターのアップを3回繰り返す「3パン」や、キャラクターや展開を印象的に見せるための「止め絵」など、さまざまな特徴的な演出手法を駆使する方なのですが、これが『ベルサイユのばら』のキャラクターやストーリーと実によくマッチしていたのです。特に39話のラストでオスカルが銃撃され崩れ落ちるシーンの止め絵は、「つづく」と書かれていることもあり、何度も見て展開を知っているにも関わらず、「ここからどうやって続くんだよ……」という絶望と共に、強烈な印象を残しています。

 この記事を書くために久々に本編を見返してみましたが、数十年ぶりにも関わらず、オープニングテーマを聞いた瞬間、すべての記憶が蘇ってきました。バラのとげに身を包まれたオスカルの姿も、今改めて見れば、「このオスカルの姿は、因習や軋轢に縛られ苦しんでいることを示しているのだろうか」など、さまざまな解釈が湧いてきます。子供の頃とは全く異なる視点や知識で往年の名作を見るのは思いのほか楽しいものだと、『ベルサイユのばら』で実感できました。

(早川清一朗)

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