『ガンバの冒険』トラウマは「ノロイ」だけじゃない? 昭和の子供たちが“恐怖”した2つの存在
名作アニメは何年経っても色あせないもので、2026年2月13日から「TOKYO MX」で再放送されている『ガンバの冒険』もそのひとつです。本作を語るうえで最凶最悪の敵「ノロイ」の恐ろしさは欠かせませんが、実は当時の子供たちを恐怖に陥れた存在はほかにもいました。
「ノロイ以上に怖かった」という声も

1970年代の名作アニメ『ガンバの冒険』が、2026年2月13日より「TOKYO MX」で再放送されています。本作といえば、「皆のトラウマ」として知られる最凶最悪の敵「ノロイ」が有名です。放送から50年以上が経過した現在もその恐ろしさは健在ですが、実は子供たちを恐怖で震え上がらせたのはノロイだけではありませんでした。
●ガンバたちに牙をむいた「黒い敵」
アニメ『ガンバの冒険』は、斎藤惇夫さんの児童小説『冒険者たち ガンバと15ひきの仲間』(岩波書店)を原作とする人気作で、1975年4月より全26話が放送されました。原作とTVアニメ版では設定に違いがあり、「ガンバ(CV:野沢雅子)」をはじめとする7匹のネズミたちが、白イタチの「ノロイ(CV:大塚周夫)」に立ち向かう物語が展開されます。
ノロイのいる島を目指して大海原へ旅に出たガンバたちですが、その道のりも決して平坦ではありません。行く先々でさまざまな困難が待ち受け、ときに自分たちよりはるかに大きい敵と命がけの戦いを繰り広げたこともあります。その1匹が、黒ギツネの「ザクリ」でした。
ザクリもまた凶悪な風貌をしており、見た目の迫力でいえばノロイに引けをとりません。まるで悪魔のような姿で牙をむき、鋭い爪で容赦なくガンバたちに襲いかかります。ネット上でも「ノロイも怖いがザクリも怖い」「やや擬人化されているノロイ以上に怖かった記憶」「キツネをここまで凶悪に描いたアニメ初めて見た」といった声が数多く寄せられていました。
やがてガンバたちは島のリスたちと手を組み、ザクリに立ち向かいます。しかしその決着は、あまりにも重い余韻を残すものでした。リスたちのリーダー「クリーク(CV:森功至)」がザクリを道連れに滝壺へ落ちる結末を迎えるのです。「リスには爪も牙もないんだ。でも俺は欲しいんだ。鋭い爪と大きな牙を……」という言葉とともに渾身の一撃を放つ姿は、名シーンのひとつとしていまなお語り継がれています。
●恐怖の存在は野生動物だけでなく……
イタチやキツネなど野生の動物たちが恐怖の存在として描かれる一方で、視聴者のなかには「人間のほうが怖かった」と感じた人も少なくありません。ネズミの視点に立った物語であることを意識してか、人間はほとんど顔が映らず、しかもモノトーンで亡霊のように表現されていました。
作中でもネズミは人間に忌み嫌われる存在とされており、第2話では卵を盗んだガンバたちを人間が追い回す場面が描かれます。見つかってはならない強敵として位置付けられている人間ですが、第15話ではその人間とガンバの思いがけない交流が取り上げられました。
仲間とはぐれ、怪我を負ったガンバは山小屋に身を寄せますが、そこで暮らす孤独な青年に見つかってしまいます。必死に逃げるものの、どこまでも追いかけてくる姿は恐怖そのものです。ガンバが彼の手に落ちた場面は、どう見ても絶体絶命の状況にしか見えません。
ところが青年はガンバの傷を手当てし、温かい食事まで与えます。そして山小屋でひと晩休ませたのち、外へと送り出しました。孤独な山小屋勤務に励む青年が、仲間とはぐれたガンバと心を通わせるという、それまで敵として描かれてきた人間像をやわらかく塗り替える一篇となっています。
野生動物や人間を恐怖の存在として描きつつ、ときに温かな交流も織り込んだ『ガンバの冒険』は、子供向けアニメの枠を超えた緊張感と深みをあわせ持つ作品です。再放送が行われているいまこそ、その奥深さをあらためて味わってみてはいかがでしょうか?
(ハララ書房)

