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『シン・エヴァ』で伏線は回収された? 25年ごしで庵野監督が見つけた「回答」

大人への成長、そして日常生活の大切さ

 集落での生活は、アヤナミレイ(仮称)にも大きな影響を与えます。アヤナミレイ(仮称)は「そっくりさん」と呼ばれ、集落で暮らすおばちゃんたちと一緒に田植えをすることに。そっくりさんは汗を流すことの楽しさ、日常生活を過ごすことの豊さを体感します。

 プラグスーツを着たそっくりさんが農作業する姿はミスマッチ感がありますが、とても牧歌的で、観ていて心がポカポカします。宮崎駿監督の『未来少年コナン』(NHK総合)のハイハーバー編、高畑勲監督のジブリ映画『おもひでぽろぽろ』(1991年)などを彷彿させます。田んぼで泥だらけになるそっくりさんは、少しずつ表情が豊かになり、他者を思いやる感情も身につけます。そんなシーンを描くことで、庵野監督自身も心癒やされるものがあったのではないでしょうか。

 大人への成長、そして日常生活の大切さ。これまでの『エヴァ』に、いや庵野作品には希薄だったキーワードが『シン・エヴァ』にはくっきりと描かれています。

物語の後半、次々と回収される伏線の数々

 TVシリーズ、旧劇場版のみならず、新劇場版にも多くの謎が盛り込まれていました。アスカはなぜ14歳の少女のままなのか、なぜ眼帯をしているのか。また、いつも古い歌謡曲を口ずさむマリ(CV:坂本真綾)は、初対面だったはずのシンジのことを「ワンコくん」と呼び、かなり年上の碇ゲンドウ(CV:立木文彦)を「ゲンドウくん」と呼んでいます。それらの理由が、物語後半ではっきりと明かされます。

 物語のクライマックスとなるのは、シンジと父・ゲンドウとの親子の葛藤です。この問題を回収しないことには、決して『エヴァ』の物語は完結しません。いろんな人たちとの出会いと別れを重ねたシンジは、ついにゲンドウと向かい合います。

 このクライマックスを見て、庵野監督は危うさを漂わせる鬼才クリエイターから、大人の映画監督へと成長を遂げたんだなぁと実感しました。結婚し、新しい会社を設立し、心の病気も経験し、でも多くの仲間たちに支えられ、見事に新劇場版を完結してみせました。人類補完計画とは、もしかすると庵野監督が真の大人へと成長するための壮大なプロジェクトだったのかもしれません。

 TVシリーズの衝撃的だった最終回から四半世紀。バブル崩壊後の日本社会は「失われた20年」と呼ばれる低迷期が続き、大人になれない子供たちが増え続けました。でも、いつまでも社会や時代のせいに責任転嫁ばかりしていては、自分の物語は何も始まりません。庵野監督は苦闘しながらも、『エヴァ』の物語を完結させるのにふさわしい回答を見つけ出してみせました。自分も大人になることで、止まっていた時計を動かしてみよう。自分にとってのベストな回答を探してみよう。『シン・エヴァ』には、観た者をそんな前向きな気持ちにさせる力があります。

 客席が明るくなるのと同時に心のなかで、こう呟いた人も多かったのではないでしょうか。「ありがとう、そしてさようなら、エヴァンゲリオン」と。

(長野辰次)

【画像】『シン・エヴァ』とも違う結末を迎える『貞本エヴァ』(5枚)

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