唯一の映画枠「金ロー」成功の秘訣? 『サマーウォーズ』に見る、日テレの作品選び
地上波テレビに残された最後の映画枠

2020年3月からTV局では「個人視聴率」が導入され、それまでの「世帯視聴率」をベースにしていた番組編成や番組づくりから変わりつつあります。スポンサー企業が求める、購買意欲のある若い視聴者向けの番組が企画されるようになってきました。その一方で、長年にわたって視聴者に親しまれてきた、いくつかの長寿番組が打ち切られています。
日本テレビ系の「金曜ロードショー」は、今や地上波テレビ唯一の映画枠となっています。「金ロー」の略称でネットユーザーたちから愛されている「金曜ロードショー」は、2020年秋から視聴者リクエストを募り始めました。『天使にラブ・ソングを…』(1992年)、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』三部作(1985年~90年)、『E.T.』(1982年)などの懐かしい洋画をオンエアし、それぞれ好評を博しました。『スタンド・バイ・ミー』(1986年)や『グーニーズ』(1985年)を初めて観て、過去の名作の面白さを知った若い世代も少なくなかったようです。
ネットユーザーたちとの交流をうまく活かし、「金曜ロードショー」は最後の映画枠を守ることに成功しています。また、今年2021年4月に「金曜ロードSHOW!」から「金曜ロードショー」に番組名称が9年ぶりに戻ったのも、「金曜ロードショー」で統一されたほうがTwitter上でトレンド入りしやすいという番組側の配慮もあったそうです。
エンディングを締めくくった、往年の決め台詞
つねに新しい情報を追い求めるテレビ界にあって、現在の「金曜ロードショー」は、懐かしさを感じさせる名作映画の世界を、幅広い層の視聴者が気軽に、リアルタイムで一緒に楽しめる場を提供する珍しい番組となっています。ぜひとも『グーニーズ』などに続く、忘れられがちな旧作を掘り起こしてほしいものです。ネットユーザー受けしそうな映画は、他にもいろいろありそうです。
かつての「金曜ロードショー」では、番組のオープニングとエンディングに映画評論家の水野晴郎さんが登場し、本編で流れる映画の解説を務めました。水野さんの解説は、「金曜ロードショー」の前番組「水曜ロードショー」(1972年~1985年)から始まり、「金曜ロードショー」になってからも1997年まで続きました。
岡山県出身の水野さんは若かりし頃、地方ではなかなか上映されない海外の名作映画を地元でも劇場上映できるように映画館や配給会社に働きかけ、さらに手づくりのポスターやチケットを用意して、お客さんを集めたそうです。その体験がとても楽しくて、郵便局員という安定した職業を辞め、映画宣伝マンに、そして映画評論家になったそうです。
映画をこよなく愛し続けた水野さんは2008年に亡くなっていますが、全国津々浦々の幅広い世代の視聴者が一緒になって、さまざまな映画を楽しんでいる今の「金曜ロードショー」の状況を、あちらの世界できっと喜んでいると思います。
かつて水野さんは、富司純子さんのことを「日本の女性の優しさと強さを表現している女優」と評していました。そんな富司さんが声優に初挑戦した『サマーウォーズ』を、水野さんは放送終了時に笑顔でこう語るのではないでしょうか。
「いやぁ、映画って本当にいいものですね~」
(長野辰次)




