『エヴァ』『コナン』『竜そば』…2021年の劇場アニメ&実写化作品を興収とともに回顧
実写映画のトップを取ったのは『東リベ』

実写映画では、和久井健氏の人気マンガ『東京卍リベンジャーズ』を原作にした『東京リベンジャーズ』が7月に公開され、44.7億円を記録しています。年間興収ランキングの第4位、実写映画のトップとなる数字です。
北村匠海さんのほか、NHK大河ドラマ『青天を衝け』に主演した吉沢亮さん、6月に公開された『ヒノマルソウル 舞台裏の英雄たち』でも好演した山田裕貴さんら若手俳優たちの思い切ったヤンキーぶりが注目されました。
北村さん演じる冴えないフリーターのタケミチが、『東リベ』の主人公です。タケミチはタイムリープして高校時代を何度もやり直すことになりますが、10年後の世界は思ったとおりのものにはなりません。自分自身が変わらなければ、世界は何も変わらないというストーリー展開は、若い世代の胸にストレートに響いたようです。
佐藤健さんが主演した「るろうに剣心」シリーズの完結編となる『るろうに剣心 最終章 The Final』は42.4億円(興収ランキング第5位)、『るろうに剣心 最終章 The Begnning』は24.1億円(同第12位)という興収結果となりました。『The Final』での剣心役の佐藤健さんと宿敵・雪代縁役の新田真剣佑さんとの壮絶な殺陣シーン、『The Begnning』での剣心の妻・雪代巴を演じた有村架純さんの静謐な演技は、コロナ禍でなければもっと評価されていたように思います。
アニメ界に残された大きな課題
2021年12月10日、アニメ制作会社「ユーフォーテーブル」(ufotable)の近藤光社長に対し、東京地裁は法人税法違反などの罪で有罪判決を下しました。この裁判の過程で、アニメ制作の過酷な実態も明らかにされました。『鬼滅の刃』や『Fate』などの人気アニメを手掛けてきた「ユーフォーテーブル」ですが、アニメ制作だけでは経営は難しく、同社が経営するカフェの収益やグッズの販売で黒字を生み出していたそうです。
摘発された脱税事件は『鬼滅の刃』の制作以前に起きたものですが、「ユーフォーテーブル」ほどの人気アニメ制作会社でも経営が不安定だったという事実は、多くの人に衝撃を与えました。もちろん脱税は許されないことですが、アニメ作品の制作費が低すぎるというアニメ業界の古くから続く構造的欠陥は「ユーフォーテーブル」一社だけの問題ではありません。アニメーターたちの生活が保証される、健全なビジネスモデルが一刻も早く確立されるべきでしょう。
コロナ禍の厳しい状況下を懸命に、1日1日を過ごしたというのが、2021年の年末を迎えた人たちの実感ではないでしょうか。アニメ界、エンタメ界が心から「おめでとう」と言える新しい年を迎えられることを願うばかりです。
(長野辰次)