『超時空要塞マクロス』最終回から40年 過酷な現場の「悔しさ」が後に歴史的名作を生む
飯島真理さんが歌うエンディング

やがてストーリーは終焉(えん)を迎え、最後のシーンが写真となってアルバムが閉じられて「A.D. 2012 So long」と映し出されます。そう、『マクロス』の最終回は2012年の設定なのです。現実世界がすでに10年先に到達してしまったことに、思いを馳せずにはいられません。
最終話のエンディングは、ミンメイ役の声優である飯島真理さんが「ランナー」2番の歌詞を歌い上げる特別仕様でした。惜しくも亡くなられた故・藤原誠氏による通常のエンディングも素晴らしいものですが、飯島さんの、ミンメイが過去に別れを告げた痛みを抱えながらも明日へ向かって歩き出す気持ちが乗り移ったかのような歌声は、心に染みわたるような響きを抱えています。
しかし、『マクロス』はしばしば27話「愛は流れる」が真の最終回であると言われています。事実、27話でデストロイド・モンスターが床を踏み抜きながら発進するシーンは新人時代の庵野秀明氏が3か月かけて描いているなど当時のアニメの水準を遥かに超えた作画・演出が随所に見られる回であることは確かです。ストーリーもいったん決着が付いているため、この見方があることは仕方のないことでしょう。
ただしそれは仕方のないことで、『マクロス』は当初全52話で構成されており、ここから徐々に縮小されて39話構成で企画がスタートします。そこからさらに23話に短縮されるのですが、あまりの人気の高さに延長が決まり、最終的に36話になったという複雑な経緯をたどっているため、ふたつの最終回があるのは当然とも言えます。
そもそも『マクロス』の製作現場は極めて過酷だったことでも知られており、メカニック作画監督を務めスピーディーかつアクロバティックな戦闘シーンで一躍名を上げた板野一郎氏は、アニメーターや制作進行といったスタッフが次々と逃げ出していたことを明かしています。製作陣にとっては不満が残る状況であり、その悔しさが劇場版『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』の超絶クオリティへと昇華されていったのです。
さまざまな意見はあると思いますが二転三転する状況のなかで生み出された「やさしさサヨナラ」はそのときできる限りのことをやりぬいた最終回であり、ロボットアニメの中心軸に恋愛関係を持ち込んできちんと決着を付け、後に多くのフォロアー作品を生み出した先駆者としての価値は、なんら色あせるものではありません。
※記事の一部を修正しました。(2022/6/26 10:08)
(早川清一朗)






