「戦争が日常」になった2022年 ウルトラセブンの名言「悲しいマラソン」が考えさせられる
考えてみれば、あらゆる分野において、技術は「上のまた上」を超える努力を惜しみません。でも、それは破滅を呼ぶことだってあると思うのです。遠い場所で起こっている「戦争」が日常になってしまった2022年の終わりに、示唆に富んだ『ウルトラセブン』の名言を振り返ります。
東西冷戦のなか、米ソが「核兵器開発」を争った時代のエピソード

今年2022年は、『ウルトラセブン』が放送から55周年を迎えた年でした。改めて放送内容を振り返ると、いま最も示唆に富むエピソードが第26話「超兵器R1号」といえます。放送された1968年(昭和43年)当時は、米ソが核兵器開発の技術をしのぎ合う東西冷戦の時代で、物語にはその背景がテーマにあるとされています。
地球防衛軍は新型水爆8000個分の威力を持つ惑星攻撃用超兵器「R1号」を完成させました。これを惑星に射てば、侵略者を星ごと破壊できて簡単です。
フルハシ「地球を侵略しようとする惑星なんかボタンひとつで木っ端みじんだ。我々はボタンの上に指をかけて、侵略しようとするヤツを待っておればいいんだ」
アンヌ 「それよりも、地球に超兵器があることを知らせるのよ」
フルハシ「そうか、そうすれば侵略してこなくなる」
アンヌ 「そうよ。使わなくても、超兵器があるだけで平和が守れるんだわ」
ダンだけは、いぶかしげな顔。
ダン 「フルハシ隊員、地球を守るためなら何をしてもいいのですか」
フルハシ「忘れるなダン。地球は狙われているんだ。今の我々の力では守りきれないような、強大な侵略者がきっと現れる。そのときのために」
ダン 「超兵器が必要なんですね?」
フルハシ「決まってるじゃないか!」
ダン 「侵略者は超兵器に対抗して、もっと強烈な破壊兵器を作りますよ!」
フルハシ「我々はそれよりも強力な兵器をまた作ればいいじゃないか」
ダン 「……それは……血を吐きながら続ける悲しいマラソンですよ」
ダンは実験中止を願いますが。R1号はその威力を試すためにギエロン星に向けて放たれ、見事に同星を破壊します。開発部はR1号より強力なR2号開発を目指すと沸き上がります。ところがギエロン星から巨大生物が飛来します。なんと星には生物がいたのです。しかもR1号の水爆を受けた影響で変異し、強靱な巨大怪物と化していました。
地球に降りたギエロン星獣に向け、戦闘機ホーク3号が新型爆弾を投下し身体をバラバラにします。セガワ博士はこう言います。
セガワ「これからもどんな強力な侵略者が来るかも分からん。1日も早くR2号を完成させなきゃ。理論的にはさらに強力な超兵器R3号、R4号の製造も可能だ」
兵器の開発は底が見えません。そんなとき、一度はバラバラにした身体の破片が集結し、ギエロン星獣が再生。放射能を帯びたガスを吐いて拡散するという最悪の事態になります。地球防衛軍が攻撃しますがなすすべなく、ついにセブンが登場。苦戦の末、最後はアイスラッガーを握りギエロン星獣の喉元を切り裂いて辛くも勝利します。その後、開発部の科学者がダンに、R2号の開発は中止する提案を出す約束をします。ほっとするダンの傍らに、かごのなかの滑車をぐるぐると回り続けるリスが……。