『仮面ライダー』の相棒「滝和也」 彼がいなければ番組は終わっていた?
滝がいたからこそライダーは輝いた
『仮面ライダー』は第14話以降について番組内容の見直しが検討されました。最重要課題は主役交代をどうするか。いくつかの案が出されました。
A案)テロップで配役変更だけ伝える
B案)全て新しく別の場所で仮面ライダー2号として出す
C案)今までと同じ場所に青年が現れる。それがライダー2号。(※単にライダー1号との橋渡し、リモート役として主役を出す案)
D案)本郷がショッカーに捕まり、再手術で別人になる
このとき、滝を2号ライダーにする案もあったとか。議論の結果C案が採用となり、藤岡と同期であった俳優、佐々木剛が2号ライダー・一文字隼人役に選ばれます。また、新シリーズ第14話からはこれまでのダークな雰囲気を一掃し、2号ライダーはコスチュームの色に赤や銀を使うなどカラフルに。出演者に女性や子どもを多用しコミカルなやりとりを増やすなど、明るいイメージに変えました。ブームを起こした「変身ポーズ」もここから始まります。
ドラマでは、活動拠点となる立花藤兵衛の店がレーシングクラブ(バイク店)に変わりますが、本郷がいる設定でスタートするため滝が必要です。おそらく第13話で明かしたFBI特命捜査員という設定も、継続を考慮した肩書でしょう。そして滝はライダーの相棒としてレギュラー出演することになり、「仮面ライダー2号」一文字隼人との2クールと、ケガから約半年後、第53話から藤岡が復帰した「新1号ライダー」にも引き続き出演しました。
完璧なスーパーサブ
滝のポジションは重要でした。一文字・本郷と労働量はほぼ変わらず、しかも生身の人間として怪人や戦闘員と戦うのですから超人です。危険を顧みず行動する勇ましさ。少年仮面ライダー隊の隊長として頼りになるお兄さん。ショッカーにひとりで立ち向かってピンチになるといよいよライダー登場! という、演出上の引き立て役にもなりました。
一歩引いた目線で見ると、藤岡や佐々木は変身すればライダーのアクターと代わるのに対し、一緒に戦う滝役の千葉治郎は出ずっぱり。画面に映るシーンは最も長かったと思います。また、第66話、67話で藤岡弘が諸事情で出演できない緊急事態では、再び滝がフル活動して番組のピンチを救っています。
『仮面ライダー』は1973年2月に全98話で終了。滝はライダーとともにゲルショッカーを壊滅させ、故郷であるアメリカへ帰ります。ラストは滝が空港で本郷、一文字、立花などの仲間全員に見送られる切ない別れのシーン。そしてライダーシリーズに二度と登場することのない伝説の人物となります。
資料によれば、滝が3号ライダーになる案が出ていたり、「V3」で登場するライダーマンに起用する案も出ていたとか。スタッフがどれだけ滝役の千葉治郎に恩義と愛情を感じているかがうかがえるエピソードといえます。
滝和也を演じた千葉治郎は「仮面ライダー」出演の件について多く語ることはなかったそうですが、後年ある雑誌のインタビューでこんな思い出を語っています。
「滝和也を演じていた頃、結婚したんです。23歳の時でした。妻はクリスチャンで僕も35歳の時にキリスト教に改宗したんです。だから今振り返ると、戦ってばかりの『仮面ライダー』って良くないなっていう気持ちがある。もちろん後悔はしていませんし自分の財産だと思っていますが、ある時期まではあまり思い出したくないというのはありましたね」
その後、33歳で役者を辞めて林業に携わるようになりましたが、現在も当時のスタッフとの交流は続いているそうです。
『仮面ライダー』は藤岡弘の大ケガがきっかけでリニューアルされ爆発的人気につながったエピソードは有名です。その前に、忘れないでほしいのです。最大の大ピンチだった第11話に「滝和也」というスーパーサブの誕生がなければ、番組は終わっていたかもしれないことを。仮面ライダーはみんなのヒーローですが、仮面ライダーのヒーローは間違いなく滝和也でした。
※文中敬称略
(石原久稔)

