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『カリオストロの城』がもっと好きになる!東映動画の傑作アニメ『長靴をはいた猫』

機械仕掛けの城で繰り広げられる、お姫さま奪回劇

「東洋のディズニー」を標榜した東映動画は、前作『太陽の王子 ホルスの大冒険』(1968年)が興行的に苦戦したことから、『長靴をはいた猫』は思いっきりエンタメ色の強い作品にしています。『ホルスの大冒険』でデビューをはたした高畑勲監督の演出は、とてもきっちりしたものでしたが、矢吹監督は各パートを担当する原画マンの裁量に任せるという自由度の高い演出だったそうです。

 自由度の高い制作現場で、その才能を遺憾なく発揮したのが若き日の宮崎監督と、先輩アニメーターの大塚康生氏でした。ふたりは物語のクライマックスとなる、魔王ルシファとペロとの対決シーンを手がけています。魔王ルシファがゾウやライオン、そしてネズミに変身するシーンを、大塚氏はアニメーションの魅力たっぷりに描いています。続いて、物語の大詰めとなるルシファの城での攻防を描いたのが、宮崎監督です。

 当時からアイデアマンとして知られていた宮崎監督は、城のあらゆる場所に奇想天外な仕掛けを用意しています。ペロとピエールは、無事にローザ姫を奪回できるのか。上下の高低差のある城の構造を巧みに活かした、手に汗を握るアクションシーンが最後まで続きます。

 日本のアニメや怪獣映画が大好きなギレルモ・デル・トロ監督は、メキシコで過ごした子供時代に東映動画『長靴をはいた猫』を観て、すっかり魅了されてしまったそうです。ギレルモ監督は『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』(2008年)のクライマックスは、宮崎アニメへのオマージュだと語っています。

デビュー作には、監督のすべてが詰まっている

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 東映動画を離れた宮崎監督は、高畑監督とのコンビでTVシリーズ『ルパン三世』(日本テレビ系)の第1シーズン、『アルプスの少女ハイジ』(フジテレビ系)をはじめとする「世界名作劇場」など、さまざまな現場を渡り歩くことになります。そんななか、巡ってきたのが『ルパン三世 ルパンVS複製人間』(1978年)に続く、『ルパン三世』劇場版第2作で劇場監督デビューできるというチャンスでした。

 1978年に放映された宮崎監督の傑作TVアニメ『未来少年コナン』(NHK総合)のスタッフが再結集したとはいえ、劇場版『ルパン三世』を制作できる期間はわずか4か月間。無謀とも思える冒険に、宮崎監督は挑んだのです。

 完全なるオリジナル新作をゼロから作り上げるのは不可能だと判断した宮崎監督は、東映動画時代に手応えを感じた『長靴をはいた猫』の魔王の城パートの、「セルフリメイク」を思い立ったのではないでしょうか。宮崎監督は、その後も『パンダコパンダ』(1972年)をベースにする形で、『となりのトトロ』(1988年)を作り上げています。

 監督デビュー作には、その監督のすべてが詰まっていると言われています。『ルパン三世 カリオストロの城』には、宮崎監督が得意とするアクション演出のすべてが、そして東映動画を独立し、『ルパン三世』『アルプスの少女ハイジ』『未来少年コナン』などの現場を渡り歩いてきた経験も、惜しみなく注ぎ込まれています。

 原画担当だった『長靴をはいた猫』から、劇場監督デビュー作『カリオストロの城』へ。宮崎監督が天才アニメーターから優れた映画作家へと大きく成長を遂げたことが、はっきりと分かります。『長靴をはいた猫』を観れば、『カリオストロの城』がもっと好きになるはずです。

(長野辰次)

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