意味がわかると恐すぎる!?『トイ・ストーリー』作品のホラーな魅力
『3』で人類の「負の歴史」に遭遇
シリーズ中、最も背筋の凍るのが『トイ・ストーリー3』(10年)です。アンディが大学に進学することになり、残されたオモチャたちは保育園へと向かいます。毎日子どもたちと一緒に遊べる楽園かと思いきや、そこは強制収容所を思わせる恐ろしい管理社会でした。ウッディの手引きによって脱走を図るオモチャたちでしたが、その先に待っていたのは、ゴミ焼却場で燃え盛る地獄の業火だったのです。
このとき、ウッディたちは死を覚悟して、みんなで手を繋ぎ合います。オモチャであるはずのウッディたちは、第二次世界大戦期のナチスドイツで行なわれたユダヤ人大量虐殺のような、人類の負の歴史を体感するのでした。見た目はまるで変わらないウッディですが、内面は大きく変化を遂げ、アンディから自立することを余儀なくされるのです。
最新作『トイ・ストーリー4』もホラー要素たっぷりです。『トイ・ストーリー3』のラストで、近所に棲む少女ボニーに引き取られることになったウッディたちに、さらなる受難が待ち受けています。旅行に出掛けたボニー一家からはぐれてしまったウッディは、アンティークショップに飾られた人形ギャビー・ギャビーと出逢うのですが、彼女は人間の子どもから一度も愛された記憶のない悲しい人形でした。
音声装置に不具合のあるギャビー・ギャビーは、ウッディの体内に縫い付けてある音声装置を手に入れるため、ウッディを拘束して解体しようとします。ネグレクトや臓器売買といった現実の社会問題が、『トイ・ストーリー4』に投影されていることがうかがえます。
オモチャの目線を通すことで、人間の心のダークサイドをあぶり出してみせる側面が「トイ・ストーリー」シリーズにはあります。あなたがオモチャを手にしたとき、オモチャもまたあなたのことを見つめているのです。
(長野辰次)