『トイ・ストーリー2』最初は映画でなかった? ピクサー、危機的状況での制作の裏側
米国の「ピクサー・アニメーション・スタジオ」といえば、「トイ・ストーリー」シリーズや「カーズ」シリーズなどの人気映画で有名です。時間を経て見直しても、新しい発見が見つかる面白さに満ちています。ピクサーの作品はどれも面白い。そう言われるようになったのは、『トイ・ストーリー2』の製作時に起きたあるトラブルがきっかけでした。
当初ビデオ用に企画された『トイ・ストーリー』シリーズ第2弾
カウボーイ人形のウッディが活躍する人気シリーズの第2弾『トイ・ストーリー2』が、2020年3月13日(金)の21時から「金曜ロードSHOW!」(日本テレビ系)でオンエアされます。前週放映された『トイ・ストーリー』(1995年)やウッディの持ち主であるアンディ少年との別れを描いた『トイ・ストーリー3』(2010年)、ウッディたちの新しい冒険談『トイ・ストーリー4』(2019年)に比べると、やや印象の薄い感のある『トイ・ストーリー2』(2000年)ですが、実は「ピクサー・アニメーション・スタジオ」を語る上で、とても重要な作品となっています。
ピクサー初の長編アニメ『トイ・ストーリー』は、世界でも初めての長編フルCGアニメとして大ヒットしました。それまでのCGアニメはバーチャルな人間キャラクターをリアルに描けば描くほど、「不気味の谷」と呼ばれる現象に陥って、人々からは敬遠されていました。ピクサーの賢いところは、おもちゃたちを主人公に選んだことです。おもちゃならCGでも違和感がありません。むしろ、おもちゃたちがスクリーン上で自在に動き回る楽しさがあふれていました。
世界中で『トイ・ストーリー』が受け入れられたことで、ジョン・ラセター監督らピクサーのトップクリエイターたちは、新作『バグズ・ライフ』(1998年)に取り掛かります。一方、配給を担当したディズニー社からは、『トイ・ストーリー』の続編も依頼されます。製作コストが低くて済むビデオ作品としての発注でした。1990年代はビデオ市場がとても大きかったのです。ピクサー側は一度はOKしますが、このことが大変なトラブルを招くことになります。
人気スタジオに生じた大きな亀裂
ジョン・ラセター監督や『トイ・ストーリー3』で監督デビューすることになる名編集マンのリー・アンクリッチといった『トイ・ストーリー』のメインスタッフは『バグズ・ライフ』に掛かりっきりのため、『トイ・ストーリー2』は実績のまだない若手スタッフが担当することになりました。そのため、ひとつのスタジオ内に充分な予算を与えられたAチーム、予算の限られたBチームというふたつのグループが存在することになったのです。
面白い作品を作るために一丸となって歩んできたピクサーに、亀裂が生じることになりました。ビデオ作品を任されたBチームの士気が上がらなかったのです。そこでピクサーはディズニー社に頼んで、『トイ・ストーリー2』も劇場公開してもらうことにします。
ですが、そこからが地獄の日々の始まりでした。同時期に劇場用作品を2本進行させるのは、大変な作業です。日本でもスタジオジブリが高畑勲監督の『火垂るの墓』と宮崎駿監督の『となりのトトロ』を1988年4月に2本立て公開していますが、2本同時進行はあまりにも過酷だったため一度きりとなっています。ピクサーでは、さらにマズい状況に陥っていました。ふたりの若手監督に任せていた『トイ・ストーリー2』の出来が良くなかったのです。