昔は喫煙ヒーローも活躍! それが今では…特撮作品の「タバコ描写」約50年の変化
「タバコを利用して地球侵略」が描かれた、納得の理由

続いて、タバコを利用して作戦を展開した敵を紹介しましょう。
まずは、川内康範さん原作の特撮ヒーロー『コンドールマン』(1975)に登場したスモッグトン。巨大なパイプが武器で、オープニングではなぜか鼻の孔にタバコを挿しています。スモッグトンが実行した作戦は、「マッドX」という物質を使って、工場の排煙や自動車の排気ガス、タバコなど町じゅうの煙を猛毒の「デーモンスモッグ」に変えていくというものでした。
次に紹介するのが『ウルトラセブン』(1967~1968)の第8話「狙われた街」に登場したメトロン星人です。タバコのなかに人びとを狂わせる赤い結晶を入れ、人間の信頼関係を破壊する侵略作戦を行いました。『ウルトラセブン』が放送された1967年の日本の喫煙率は男性82.3%、女性17.7%で、宇宙からの侵略者が目をつけたのも納得です。
「狙われた町」から38年の時を経て制作された『ウルトラマンマックス』(2005~2006)の第24話「狙われない街」。こちらに登場したメトロン星人は、タバコではなく携帯電話の電波を利用して人びとを狂わせます。2005年の喫煙率を見てみると、男性45.8%、女性13.8%で、1967年よりも減少しています。この回に登場した楢崎刑事が取調室でタバコを取り出した際、「禁煙です」と同僚に止められるやり取りも時代の流れを感じさせます。
さらにその後、『ウルトラマンオーブ』(2016)の第6話「入らずの森」に登場したメトロン星人タルデは、世の中の喫煙率の減少から「幻覚タバコ作戦」の実行を断念しています。
特撮作品の映像を見ると、時代と呼応するように、2000年代に入ってから喫煙描写が減少していることがわかります。映像作品は時代を映す鏡のような側面があるものです。現在の時代の流れから考えると、喫煙描写の自粛や減少は仕方のないことでしょう。
(森谷秀)