ナウシカが長年愛されるのは「モデル」たちのおかげ? 宮崎監督が参考にした作品とは
『風の谷のナウシカ』のヒロイン、ナウシカは、マンガ版で誕生してから40年以上が経った現在でも、多くのファンに愛されています。その魅力的なキャラクターが誕生した裏側には、何人かの「モデル」の存在がありました。
ナウシカ誕生の裏側に、意外な作品の存在が?

スタジオジブリ作品を代表する人気ヒロイン、『風の谷のナウシカ』のナウシカ誕生には、モデルとなった人物たちの存在がありました。ナウシカはわずか16歳でありながら、病で動けなくなってしまった父・ジルに代わり、風の谷の「姫様」として人びとを支えています。また、人間や動物、腐海に棲む蟲にいたるまで、分け隔てない優しさを与える人物です。そんなナウシカのキャラクターをつくるうえで、宮崎駿監督が参考とした作品、人物について紹介します。
『ジブリの教科書1 風の谷のナウシカ』や『スタジオジブリ物語』などの複数の書籍によれば、宮崎監督はアメリカの作家、リチャード・コーベンが出版したコミック『ロルフ』の映像化を望んでいたそうです。
『ロルフ』は、古い城に住む王女と彼女に付き従う狼の話で、悪魔の軍団を狼が倒し、王女とともに遠くの国へ旅立つというストーリーでした。この『ロルフ』という作品に登場する、寝たきりの父を持った「ヤラ」というお姫様が、ナウシカに大きな影響を与えたそうです。
宮崎監督は1996年9月1日に発売された『風の谷のナウシカ 宮崎駿水彩画集』のインタビューのなかで、ヤラというキャラクターがナウシカに及ぼした影響について、次のように語っています。
「父親は生きていても役には立たない。とはいえ経験不足でおぼつかず、まだまだ父親に代わる任には耐えられない娘が、一国の運命と多くの人間に対する責任を否応無く背負わなければならない。その責任の重さに打ちひしがれている主人公というのが、はじめて僕のなかに生まれたんです」
それまでの宮崎監督は、いかに「自由であるか」というキャラクターばかり考えていましたが、ヤラの「父親の代わりに責任を背負って立つ」ヒロイン像が、ナウシカに大きな影響を与えたそうです。
また、原作マンガ『風の谷のナウシカ』コミックス第1巻に宮崎監督が寄せたエッセイでも、ナウシカのモデルになった人物について語られています。
その人物は、古代ギリシャの吟遊詩人・ホメロスが作った叙事詩『オデュッセイア』に登場する、パイエケスの王女・ナウシカアです。鈴木敏夫プロデューサーが責任編集の著書『スタジオジブリ物語』でも「ナウシカ」という名前は、ここから採られたと明かされています。『オデュッセイア』の主人公・オデュッセウスが旅の途中でスケリエ島に漂着した際、主人公を助けた博愛の王女がナウシカアだったのです。
また、同じくコミックス第1巻では、ナウシカアのほかに、もうひとりモデルがいたことが明らかになっています。それは日本の古典『堤中納言物語』のなかに登場する、「虫愛づる姫君」です。