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ウルトラマン以前の特撮が怖すぎ! 『美女と液体人間』ほか大人向け怪奇映画たち

平和な社会に居場所を見つけられない『電送人間』

鶴田浩二主演の『電送人間』DVD(東宝)
鶴田浩二主演の『電送人間』DVD(東宝)

 再び白川由美さんがヒロインを演じた「変身人間」シリーズの第2弾となったのは、『電送人間』(1960年)です。こちらは、のちにお色気SFアクション映画『エスパイ』(1974年)などを手がける福田純監督の作品で、人気スター・鶴田浩二さんが主演した珍しい特撮怪奇映画です。

 銃剣で男性が刺殺される事件が連続して起きますが、殺人鬼は神出鬼没で警察は逮捕することができません。この殺人鬼の正体は、元日本陸軍の兵士・須藤(中丸忠雄)でした。太平洋戦争末期、軍資金を横領しようとした上官に逆らったために、須藤は生き埋めにされたという過去があったのです。

 生き延びた須藤は、陸軍が密かに開発を進めていた「物質電送装置」によって電送人間となり、終戦後ものうのうと暮らす元上官たちへの復讐を重ねていきます。警察に追われる須藤が、軍服姿で高度経済成長を遂げた街を逃走するシーンは異様さを感じさせます。

 電送人間には、テレビ画面のような走査線が浮かび、とても不安定な形状です。戦争の記憶が失われつつある現代社会では、電送人間は復讐に生きることでしか自分の存在を証明できません。平和を享受できない、とても哀しい人間です。

「推しの子」をプロデュースする『ガス人間第1号』

 シリーズ最高傑作と評されているのは、『ガス人間第1号』(1960年)です。本多猪四郎監督と木村武脚本による、ガス人間と美女との異形のラブロマンスものです。八千草薫さんの息を呑むほどの美しさと、東宝の特撮映画を支えてきた土屋嘉男さんの名演が目に焼き付きます。

 都内の銀行が次々と襲われる怪事件が起きます。密室状態の金庫から大金を盗み出す犯人の正体は、体を気体に変えることができるガス人間こと水野(土屋嘉男)でした。水野は盗んだお金で、落ちぶれた日本舞踊の家元・藤千代(八千草薫)の発表会を成功させようとしていたのです。

 水野は普段は図書館の司書を勤めている平凡な男です。藤千代は水野から渡されたお金はワケありなことを知りながら、それでも発表会の準備を進めます。社会的倫理よりも、自分の芸を世間に発表したいという表現者としてのエゴイズムが勝ってしまったのです。

 警察が厳重に監視するなか、藤千代の舞台が始まります。客席には水野ただひとりだけ。水野はうれしそうです。自分の「推しの子」のステージを、自分だけが独占できる喜びでいっぱいです。そして特撮映画史に残る、甘くせつないエンディングを迎えることになるのです。

 SFアニメ『銀河鉄道999』のメーテルのモデルにもなった八千草薫さんは、美しさと同時に恐ろしさも感じさせます。二面性のある女性となっています。

 変身人間シリーズに、『透明人間』(1954年)や『マタンゴ』(1963年)を含める場合もあります。どの作品も、異形の存在になってしまった人間の哀しみが描かれていることで共通しています。

 その後、円谷監督率いる円谷プロは、主人公が巨大なヒーローに変身する『ウルトラマン』の放映を1966年に始め、大ブームを巻き起こすことになります。明るい雰囲気の『ウルトラマン』ですが、人間が怪獣化してしまった第22話「故郷は地球」のジャミラなどの哀しいエピソードも忘れられません。変身ヒーローものの根底には、変身人間たちの孤独さや哀しみが流れているように感じられます。

(長野辰次)

【画像】大人も魅了された! 「変身人間」など特撮に登場した美女たち(5枚)

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