『北斗の拳』もっさり巨漢「山のフドウ」が愛されるワケ その「生き様」と「死に様」
『北斗の拳』にはカッコいい拳法の使い手たちが次々と登場しますが、例外的に人気を集めているのが、もっさりしたおっさん面の「山のフドウ」です。なぜフドウはそんなに愛されるのでしょうか。
とにかく優しい「山のフドウ」

『北斗の拳』の人気キャラクターは、概ねがシャープでスタイリッシュな中、いわゆる巨漢タイプながら熱い支持を集めているのが「南斗五車星」のひとり、「山のフドウ」です。
ルックスは決してカッコいいとはいえません。誰がどう見てももっさりしたおっさん面です(実際にバットから「おっさん」呼ばわりされていました)。巨体で、デブキャラといってもいいでしょう。しかし、同じデブキャラでもネタ扱いされがちなハート様と異なり、フドウは『北斗の拳』ファンから圧倒的に愛されています。なぜフドウはここまで愛されるのでしょうか。
まず、なんといっても全てを包み込むような優しさがあります。フドウは乱世の中、親が殺されたり、親に見放されたりした多くの孤児たちを養子にして養っていました。彼らに見せる表情はいつも穏やかで、彼らの身に危機が迫れば体を張って守り抜こうとします。出会ったばかりのリンとバットにも同じように接していました。
フドウは南斗五車星のひとりとして、ケンシロウを南斗最後の将、ユリアに引き合わせるという役目を担っていました。しかしそこよりも、フドウとケンシロウは「子どもたちを救う」という一点において強い絆で結ばれます。必死で子どもたちを守ろうとするフドウに対して、ケンシロウは「この傷の痛みは一瞬……だがあんたの死の痛みは一生残る」「おまえは死んではならぬ男よ……」とまで声をかけているのです。
フドウは「気は優しくて力持ち」なだけの男ではありません。彼はかつて「鬼のフドウ」として乱暴狼藉の限りを尽くしていた時代がありました。なんと北斗の道場に乗り込んで、リュウケンや若い頃のラオウを前に大暴れしていたのです。あのラオウがフドウの暴れっぷりに恐怖を感じていたほどでした。
フドウが改心したのは、幼かったユリアに命の大切さを教えられたからです。親の顔も知らず、「命などはウジ虫のごとく湧きでるもの」だと思っており、本当に人をウジ虫のように踏み潰してきたフドウは、手のひらに乗せた子犬のぬくもりに初めて命の尊さを感じました。彼が子どもを手や肩に乗せたがるのは、命のぬくもりを感じたいからなのかもしれません。