『北斗の拳』本当の最重要人物はリンだった! 天帝を守護する北斗の宿命
全ては乱世を平定する天帝の計画だった!?

リンの出生の秘密を前提としてケンシロウの戦いを見直すと、全ては「無自覚な天帝」の意思が、混乱した時代に救世主を遣わせたかのように思えます。
ラオウとの戦いが終わった後、余命わずかのユリアと共に去ったケンシロウには、特に戦う理由がありませんでした。ラオウのように乱世へ覇を唱えようという野望もなく、最強になりたいというモチベーションもありません。ユリアと暮らしている間も世界は争いに満ちていたはずですが、ケンシロウが隠棲していたことから明らかです。
そんなケンシロウが再び歴史の表舞台に姿を表したのは、リンに亡きユリアのネックレスを渡すためでした。もしもリンがバットと共に反乱軍を組織しておらず、どこか別の場所で平穏に暮らしていたのなら、ケンシロウは積極的に天帝軍と敵対しなかったかもしれません。
またリンが修羅の国に連れ去られていなければ、ケンシロウが海を渡ってカイオウと戦うこともなかったはずです。天帝が誘拐されたからこそ、守護者である北斗神拳伝承者が修羅の国を訪れ、そしてカイオウの北斗宗家への怨念も浄化されたといえます。これらの因果関係だけに着目すれば、リンがケンシロウを戦いの運命に導いたと考えることは十分可能でしょう。
もちろんリン本人に、ケンシロウを救世主にしようとする意図は全くないはずですから、きっとリンに流れる天帝の血の導きです。歴代の天帝はリンとケンシロウのような関係性で時代の運命に介入し、世に平穏をもたらしてきたのかもしれません。
●全ては2000年前から続く太極星を中心とした拳士たちの神話
世紀末救世主伝説は、言葉を失った幼き天帝が、脱水症状で行き倒れて牢屋に放り込まれた守護者(北斗神拳伝承者)に水を与えて復活させた時に始まりました。この出会いは必然であり、全ては大いなる天の配剤だったと考えると、『北斗の拳』の見方が変わるかもしれません。
『北斗の拳』は多面的な作品です。熱き漢たちの戦いの物語の裏には、太極星である天帝を中心とした、北斗・南斗・元斗の拳士たちによって構成される、壮大なパンテオンとしての一面が隠されています。その魅力は1988年の連載終了から35年を経ても色褪せることはありません。紛れもなくマンガ史に残る大傑作だといえるでしょう。
(レトロ@長谷部 耕平)




