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宇宙人の声「ワレワレハ…」のルーツ? 50~60年代SF邦画で築かれたそのイメージ

「ワレワレハ宇宙人ダ」の大いなる元ネタ、『地球防衛軍』

『地球防衛軍』メインビジュアルの下側に描かれるヘルメット姿のキャラクターが、宇宙人「ミステリアン」。画像は「地球防衛軍」DVD(東宝)
『地球防衛軍』メインビジュアルの下側に描かれるヘルメット姿のキャラクターが、宇宙人「ミステリアン」。画像は「地球防衛軍」DVD(東宝)

『宇宙人東京に現わる』の翌年、東宝が製作した映画が『地球防衛軍』(1957年)です。パイラ人が人類に友好的な宇宙人であったのに対し、本作『地球防衛軍』に登場する宇宙人“ミステリアン”は侵略者。またミステリアンはぬいぐるみではなく、顔のほとんどを覆うヘルメットとマントの衣裳によって表現されています。

 みなさんが宇宙人のモノマネをする際、のどを震わせながら「ワレワレハ宇宙人ダ……」と言う方が多いのではないでしょうか。落語家の林家木久扇師匠も『笑点』で時おりこの宇宙人のモノマネを披露していますが、これは本作に登場するミステリアンの統領の話し方が元ネタなのです。 

 劇中でミステリアン統領は「チ・キュ・ウ・ノ・ミ・ナ・サ・ン」と平坦な発音で人類に話しかけます。この声は翻訳機から発せられた音声という設定で、機械を通したように加工されています。さらに翻訳機からの音声とは別に、フランス語とドイツ語、芥川龍之介の短編小説『河童』に登場する河童語を混ぜた“宇宙語”も小さく重ねられており、作品のリアリティを高めます。

 ミステリアン統領を演じたのが、東宝特撮映画や黒澤明監督作品の常連キャストとして知られる俳優の土屋嘉男さん。この翻訳機の音声というアイディアも宇宙語も、土屋さんがご自身で考案されたものです。

 後に土屋さんは本作での宇宙人演技をさらに発展させ、ゴジラシリーズ第6作目『怪獣大戦争』(1965)で地球侵略を企む宇宙人“X星人”の統制官を演じました。こちらでは「ヤッズマザゥ」などの土屋さんによる宇宙語をよりはっきりと聞き取ることができます。

 1960年代に入ると、円谷プロダクションによる“ウルトラシリーズ”の放送が開始されます。宇宙からの侵略者との戦いを中心に描いた『ウルトラセブン』(1967~68年)も製作され、映像作品に登場する宇宙人の姿かたちのバリエーションも広がっていきました。映像作品に登場する宇宙人というと、今日ではバルタン星人などのウルトラシリーズの宇宙人をイメージする方も多いかと思われます。

 しかし加工した音声やぬいぐるみを用いるなどの宇宙人の表現方法の原型は、『宇宙人東京に現わる』と『地球防衛軍』の2作品ですでに完成されていたと言えるでしょう。『地球防衛軍』の特技監督を務めた円谷英二さんは円谷プロダクションの創業者。『宇宙人東京に現わる』の特撮を手掛けた的場徹さんもウルトラシリーズのメインスタッフでした。この2作で培われた技術は確実にウルトラシリーズに受け継がれているでしょう。パイラ人とミステリアンは、その後の特撮作品に登場する宇宙人たちの偉大なるパイオニアなのです。

(森谷秀)

【画像】宇宙人のイメージを大きく広げた、特撮・SF作品たち(7枚)

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