『北斗の拳』強さとは何だ? 愛と哀しみが何になる? ラオウの生と死は問い続ける
ラオウが覇王を目指した理由とその限界

リュウケンが語ったように、哀しみを知らない者(強すぎて自己の限界がよく見えていない者)が北斗神拳の奥義「無想転生」を習得できないのは当然のことだといえます。世界への信頼感がないから、無法の荒野を力でねじ伏せる方法を選んだのでしょう。これこそラオウが覇王への道を選んだ理由であり、この時点での限界だといえます。
●ラオウの本当の望みとは?
そのようなラオウがケンシロウと同じ境地に達した結果、全てが不要となり、天を取る野心すら消え去ったのは当然のことだといえます。
無想転生によってお互いの奥義が無効となったふたりは、少年時代のように純粋に競い合います。全力を出し切ったラオウは自らの生に満足し昇天しました。
ラオウの本当の望みとは、天から与えられた強大な力を全て出しきって生き切ることだったのではないでしょうか。そしてもしもラオウがケンシロウに勝っていたとしたら、その後はケンシロウと同じような道を歩んだかもしれません。拳王軍を再編成したとしても、その方針は暴力による支配とは異なるものになると思われます。
愛や哀しみを知ることは、人格を変え、生き方を変えてしまいます。ラオウが最初に追い求めたのは純粋な強さでしたが、その強さの本質が人の想いの複合体であることを知りませんでした。自分ひとりではダメなのです。

ユリアやトキのセリフから、ラオウはあまりにもプライドが高く純粋だったため、本質的に愛の価値を知りながらも、認められなかった人物、との見方も可能です。トキやケンシロウとの兄弟愛や多くの男たちの生きざまが、乱世をまとめるためには暴力による制圧しかないと考えていたラオウを目覚めさせさせたのです。
連載終了から数十年を経てもラオウの魅力が薄れないのは「世界の残酷さに絶望して暴力を選んだ人間が愛を知り、再び純粋に戻っていく素晴らしさ」が描かれているためかもしれません。人間に感情があるかぎり『北斗の拳』の素晴らしさは語り継がれていくことでしょう。
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2023年12月20日(水)、『北斗の拳』40周年を記念しコアミックスより刊行が開始されたコミックス『新装版』の、第9巻と第10巻が発売されました。毎月20日に2冊ずつ発売される予定で、各巻の収録話は10年前に刊行された「究極版」と同じです。
またコアミックスのマンガ配信サイト「WEBゼノン編集部」の『金曜ドラマ 北斗の拳』にて、その刊行にあわせ、ケンシロウ対ラオウ最終決戦直前のハイライト、フドウとの決着とユリアとの訣別を通しラオウが愛と哀しみを探求する第130話「肉体をこえる魂!の巻」と第131話「心を血に染めて!の巻」を、2023年12月20日(水)0時から2024年1月2日(火)23時59分までの期間、無料で公開しています。
■WEBゼノン編集部『金曜ドラマ 北斗の拳』
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