恋人が殺し合う悲劇も…どう転んでも後味の悪い「ガンダム」シリーズに見る同士討ち
「ガンダム」シリーズの戦闘は、敵と味方が対峙するだけではありません。味方同士が誤って、もしくは意図的に一戦を交えることも。今回はそんな悲劇的でインパクト大の「同士討ち」シーンを振り返ります。
困惑、怒り、悲劇……インパクトが大きすぎる同士討ち

「機動戦士ガンダム」シリーズの戦闘は、パイロットたちの信念や技術のぶつけ合いで、ファンを楽しませてくれます。一方で、やり切れない思いを抱かせ、怒りや悲劇を生み出すのが「同士討ち」シーンです。今回は、そんなインパクトが強すぎるフレンドリーファイアを振り返ります。
まず紹介したいのは『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』における、ハサウェイ・ノア(ジェガン)が撃墜した、チェーン・アギ(リ・ガズィ)の同士討ちの悲劇です。両機ともロンド・ベル所属のMSです。
ことの発端は、ハサウェイとクェス・パラヤの出会いに溯ります。邂逅当初からニュータイプの素養を見せるクェスにハサウェイは興味を抱き、親交を深めていきます。しかしクェスは、彼よりもニュータイプであるアムロ・レイの方にシンパシーを抱き、接近を試みるなか、アムロの恋人チェーン・アギの存在を疎ましく感じていました。
そんななか、偶然出会ったシャア・アズナブルによってクェスの、そしてハサウェイの運命が悲劇へと転がっていきます。
シャアの思想や感性に共感したクェスは、彼の勧誘でネオジオンに与することになり、そのニュータイプの素養やパイロットの能力を利用されていきました。
かたやハサウェイは、これまでアムロやシャアらニュータイプを間近で見て、感じてきた少年です。自身にニュータイプの素養の自覚があったかはわかりませんが、敵同士でもわかり合えるとの考えからクェスを取り戻すために躍起になり、戦場に向かいます。
独断でジェガンを駆り出撃したハサウェイは、クェス(αアジール)と接触し、説得を試みますが、ここでチェーン(リ・ガズィ)が合流しました。
チェーンの存在を認識したクェスは、攻撃を加え「お前がいなければアムロのところにいられたのに」と敵意をむき出しにします。
クェスが攻撃してきたこと、彼女が好き嫌いだけで行動する子どもであるがゆえ、感情だけでハサウェイを殺しかねない、危険な人物という判断があったのか、チェーンはグレネードを発射。着弾寸前、クェスはまきこみ爆発からハサウェイをかばうように直撃を受け爆散し、戦死しました。
好意と憧れを抱いた少女を目の前で殺されたハサウェイは、チェーンの思惑を理解できないほど取り乱し激昂します。そしてビームライフルを乱射し、チェーンを撃墜してしまいました。
少年という心が未成熟で、感情のまま行動してしまった悲劇でしたが、独断で行動したこのシーンに怒りを覚えた視聴者もいたことと思います。