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なぜ「京アニ作品」は愛されるのか 『ユーフォニアム3期』へ続く職人集団の歴史

TVアニメ『響け!ユーフォニアム3』の放送開始を控え、年末年始のEテレは連日その劇場版を地上波初放送します。これほど注目を集めるのは作品の魅力に加え、「京アニ」というブランド力も働いているのではないでしょうか。

それは団地の一室から始まった

『響け!ユーフォニアム3』PVより (C)武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会2024
『響け!ユーフォニアム3』PVより (C)武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会2024

 2024年放送予定のTVアニメに、春スタート予定の『響け!ユーフォニアム3』(NHK Eテレ)があります。15年第1期、16年第2期に続く注目の人気シリーズ第3期にあたり、制作は引き続き、あの「京都アニメーション」(以下、京アニ)が担当します。

 このニュースに歓喜したファンは多かったでしょう。そこには「作品の続きが観られるから」という理由はもちろんのことですが、「制作が京アニだから」という理由も多分に含まれるはずです。なぜそういえるのか、ひいては「なぜ『京アニ』は愛される=ブランディングに成功したのか」という点について、その歴史を振り返りつつ初歩的なところからおさらいしていきましょう。

●いまへ続く「主婦たちの繊細な手作業」

 2019年7月、京都府宇治市にある京都アニメーション本社で発生した放火殺人事件で、不本意ながらアニメファン以外にも、その社名は広く知られることになりました。

 同社の「はじまり」は、ひとりの主婦と団地の一室です。

 手塚治虫氏が創設したアニメ制作会社「虫プロダクション」の制作スタッフだった八田陽子(旧姓・杉山)さんが、京都で結婚したのち、1981年に近所の主婦たちから請われ、団地の一室でアニメ制作教室を開きます。これをきっかけに、「タツノコプロ」「サンライズ」といった大手アニメ制作会社から、主に「仕上げ」という工程の仕事を受け持つようになりました。これが「丁寧でキレイ」と業界で評判となり、仕事の依頼が増えていきます。

 90年代に入ると、「京アニは、絵がキレイ」という評が浸透します。「キレイ」のひと言で表現するのは雑に思われるかも知れませんが、この一語に、人物や背景などの「動き」「色彩」等々アニメーション映像に関したすべての要素についての、繊細、精巧、緻密、巧緻、といった「美」を形容するあらゆる単語が集約されている、と理解してください。

 それが群を抜いているというのは、素人目にも歴然でしょう。特に90年代の作品においては顕著かもしれません。不自然さのない人体の動き、目の輝き、表情のしわ、髪の毛一本一本、ほとばしる汗や頬をつたう涙のひとしずく。太陽や海や空の輝きと影の陰影、風に揺れる草木の一葉まで、細部までが「キレイ」です。「京アニ」の素晴らしいところは、どのシーンのどの場面を切り取って観ても「キレイ」の手を抜いていないことです。

【キレイ】『響け!ユーフォニアム3』最新PVのシーンカットをチェックする!(7枚)

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