平成の「赤顔のウルトラマン」は何者だった? 主演が意外すぎる異色作
出光のCMで「赤い顔」のウルトラマンが空を飛んでいましたが……彼は一体何者だったのでしょうか? 多くの人は謎のままだった「ゼアス」を改めて解説します。
劇場版とCMではイメージが違う?「ゼアス」はどこからやってきた?

みなさんは、覚えていらっしゃるでしょうか。平成期の「とんねるず」と「ガソリンスタンド」に深い縁のある、「赤い顔をした謎のウルトラマン」がいたことを……。
平成ウルトラマンといえば『ウルトラマンティガ』『ウルトラマンダイナ』『ウルトラマンガイア』をはじめとするTVシリーズをさすことが多いですが、それに先駆けて活躍していたのが真っ赤な顔の「ウルトラマンゼアス」です。彼の登場から30年近くが経過した今、改めて「ゼアスとは何だったのか」を基本的なところから振り返ってみましょう。
まず大前提として、「ウルトラマンゼアス」はTVシリーズではありません。多くの方は「ガソリンスタンドのCM」によく出ていた記憶があるのではないでしょうか。それは全くもってその通りで、「ウルトラマンゼアス」とは出光興産の「ゼアスガソリン」のCMキャラクターとして考案されたウルトラマン、つまりシリーズ初となる「企業タイアップ」のウルトラマンだったのです。
そこから企画は派生して1996年3月9日、映画『ウルトラマン ワンダフルワールド』のなかの1作として劇場版が公開されたのでした。『ウルトラマンティガ』の放送開始が同年9月7日で、その約半年前のお披露目となります。
さて出光興産のCMに登場した「ゼアス」は勇ましく空を飛ぶ姿が印象的でしたが、劇場版はかなり真逆な姿として描かれます。防衛組織Mydo(マイド)は普段、ガソリスンスタンドとして運営されており、ゼアスはそこでヘタレ店員(隊員)の朝日勝人として働いています。
その朝日勝人を演じたのは関口正晴さんという方です。どうにも抑揚のない演技が目立ちます。それもそのはずで、この方はプロの役者さんではなくお笑いコンビ「とんねるず」のマネージャーを務めていた方でした。
そしてとんねるずのふたりもまた劇場一作目では隊長、副隊長役を演じていたのです。内容は公式によるパロディのようなドタバタコントのようであり、朝日勝人が電動歯ブラシで変身したり、自分の光線が跳ね返って悶えたりと、なかなかの「ダメウルトラマンっぷり」を披露します。潔いほどに「企画性」に特化した作品でした。
また本作では科学特捜隊メンバーをはじめ、歴代ウルトラマン俳優たちが多くゲスト出演を果たしています。前作よりもシリアスな内容になった劇場版第2作目では、『セブン』のモロボシダン役を務めた森次晃嗣さんがMydo隊長を演じました。こうしたお祭り感もまた、ひたすら楽しい「ゼアス」との相性が良かったのです。
最初に述べた通り、同年には『ウルトラマンティガ』の放送が始まり、TVシリーズは令和の今もなお続いています。その傍流で確かに「今までにないウルトラマン像」を打ち出した「ゼアス」は、公式サイトにもちゃんと記載のあるれっきとしたウルトラ戦士なのです。
(片野)