マグミクス | manga * anime * game

禁断映画『ムカデ人間』『あくまのくまさん』を配給・宣伝した「伝説の男」叶井俊太郎の功績

河崎実監督の『いかレスラー』や『日本以外全部沈没』などをプロデュースしたことで知られる叶井俊太郎氏は、『キラーコンドーム』『ムカデ人間』『キラーカブトガニ』などの非常にユニークな洋画のバイヤー&宣伝マンとしても大いに活躍しました。「まったく未練がない」と言い切った叶井氏の稀有な映画人生を振り返ります。

「月9」のモデルにもなった伝説の映画バイヤー

映画『ムカデ人間』DVD(トランスフォーマー)
映画『ムカデ人間』DVD(トランスフォーマー)

 映画業界に数々の伝説を残した映画バイヤー、宣伝プロデューサーの叶井俊太郎氏が、2024年2月16日に亡くなりました。享年56歳でした。

 ジャン=ピエール・ジュネ監督のおしゃれなフランス映画『アメリ』(2001年)を、叶井氏はホラー映画だと勘違いして買い付けたところ、日本でも興収16億円の大ヒットになりました。河崎実監督とタッグを組んだSFパロディ映画『日本以外全部沈没』(2006年)も、スマッシュヒットを記録しています。

 若い頃の叶井氏はかなりのイケメンで、2003年に放送された江口洋介さん主演ドラマ『東京ラブ・シネマ』(フジテレビ系)のモデルにもなっています。漫画家の倉田真由美さんと2009年に結婚していますが、離婚歴は3回、自己破産も経験するなど、公私ともに波瀾万丈な人生でした。

 そんな叶井氏が配給・宣伝を手がけた代表作を、特撮系の作品を中心に振り返りたいと思います。

海外では上映禁止扱いだった『ムカデ人間』

 エコロジースリラーと叶井氏が名づけたのは、オランダ出身のトム・シックス監督が撮った『ムカデ人間』(2010年)です。マッドサイエンティストによって、拉致監禁された3人の男女が接合手術を受け、数珠つなぎ状態の「ムカデ人間」になるという、非道極まりない内容です。

 ナチスの殺人医師として恐れられたヨーゼフ・メンゲレから着想を得た危険な作品ながら、日本での劇場公開は大成功。シックス監督はさらに悪趣味度を増した『ムカデ人間2』(2011年)、『ムカデ人間3』(2015年)を制作しています。

 海外では上映禁止扱いされた「ムカデ人間」シリーズですが、こうした賛否を呼ぶキワモノ映画の配給・宣伝こそ、叶井氏は得意としていました。『ムカデ人間』の公開時には、「ムカデ合コン」「ムカデ割引」などのユニークなキャンペーンも行い、話題を集めています。

 ほかにも実在の事件を題材にした香港映画『八仙飯店之人肉饅頭』(1993年)、H・R・ギーガーがクリーチャーデザインしたドイツ映画『キラーコンドーム』(1996年)など、埋もれていたZ級作品を発掘しては、日本でヒットさせています。その一方、2001年に劇場公開した『クイーン・コング』(1976年)は歴史的な大コケ映画となりました。

 自分の直感を信じ、「面白い!」と感じた作品を配給・宣伝する生涯を貫いた叶井氏でした。日本の映画界が多様性に満ちていることの要因として、叶井氏の30年間におよぶ功績も少なからずあるのではないでしょうか。

【画像】「えっ…?見たいかも」 これが叶井俊太郎氏が送り出した「伝説級」の映画たちです(6枚)

画像ギャラリー

1 2