宮崎駿監督、不遇の時代の名作『名探偵ホームズ』 パートナーに選ばれた当時無名の大学生とは?
宮崎駿監督は『ルパン三世 カリオストロの城』で劇場監督デビューしましたが、興収結果は散々でした。『風の谷のナウシカ』でブレイクするまで、5年の歳月を費やしています。いわば不遇の時期に制作されたのが『名探偵ホームズ』でした。評価されることの少ない作品ですが、意外な人物がスタッフだったことが今では知られています。
『風の谷のナウシカ』の併映作だった『名探偵ホームズ』
宮崎駿監督の劇場アニメ『君たちはどう生きるか』(2023年)が、「第96回アカデミー賞」長編アニメ映画賞を受賞しました。宮崎監督の同賞の受賞は、『千と千尋の神隠し』(2001年)以来となる2度目の快挙です。
2024年3月には、宮崎監督の初めてのオリジナルアニメ『風の谷のナウシカ』(1984年)が、劇場公開から40年を迎えました。『ナウシカ』完結編の行方が気になるファンは多いようです。人気作『ナウシカ』の影に隠れていますが、『ナウシカ』と同時併映された劇場版『名探偵ホームズ』も、公開から40年となります。
2024年3月22日(金)からは全国117館で、『名探偵ホームズ』デジタルリマスター版が限定上映されます。いま振り返ると意外な人物とのコラボ作だった『名探偵ホームズ』の魅力、そして宮崎監督が傑作を生み出す「ある傾向」について探ります。
トラブルはあったものの、宮崎駿カラーが満載
宮崎監督の輝かしいフィルモグラフィーのなかでは、初の劇場監督作『ルパン三世 カリオストロの城』(1979年)とブレイク作『ナウシカ』のはざま時期に制作された『名探偵ホームズ』は、語られることが少ない作品です。
もともとはイタリアの国営放送からの発注を受け、東京ムービー新社(現在のトムス・エンタテイメント)が製作したTVアニメシリーズでした。イタリアからの製作資金が途中で途絶えるなどのトラブルがあり、宮崎監督はシリーズ初期の6話のみ関わって、降板しています。
40周年記念として上映されるのは、『ナウシカ』と同時併映された劇場版第1作『名探偵ホームズ 青い紅玉の巻/海底の財宝の巻』と、『天空の城ラピュタ』(1986年)と同時併映された第2作『名探偵ホームズ ミセス・ハドソン人質事件の巻/ドーバー海峡の大空中戦!の巻』の合計4話です。
産業革命期のロンドンを舞台に、「悪の天才」モリアーティ教授と探偵ホームズとの追いつ追われつのチェイスシーンが楽しめる『青い紅玉』、ミリタリー趣味が満載の『海底の財宝』は、宮崎アニメのおいしいところだけを集めたような快作です。
また、『ドーバー海峡の大空中戦!』は、宮崎監督の航空機マニアぶりが全開となった『紅の豚』(1992年)の原型となった一編です。ハドソン夫人に優しくされたモリアーティ教授やスマイリーたちが素直な一面を見せる『ミセス・ハドソン人質事件』も、人間味あふれるドラマとなっています。
犬顔のホームズ役を広川太一郎さん、オオカミ顔のモリアーティ教授を大塚周夫さんと、レジェンド声優たちが演じていたことも忘れられません。