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『ウルトラマンA』スカスカな股間のすき間がすぐ消えたワケ 不評より実は不具合?

「ウルトラマン」シリーズで使用される、いわゆる変心後の姿のスーツは、初代マンからずっと「山本化学工業」という会社が制作しているそうです。一度だけ違うタイプの発注がきたときは、さぞや驚かれたと想像します。

ワンピースのデメリットを解消するはずだったが

こちらはフィギュアだが、股間から鼠径部にかけてイメージ的にはこのようなツーピースタイプだった。「S.H.Figuarts ウルトラマンA」(BANDAI SPIRITS) (C)円谷プロ
こちらはフィギュアだが、股間から鼠径部にかけてイメージ的にはこのようなツーピースタイプだった。「S.H.Figuarts ウルトラマンA」(BANDAI SPIRITS) (C)円谷プロ

 1972年にTV放送を開始した『ウルトラマンA(エース)』の、当時のスナップ写真のなかで、股関節部分にすき間のある「A」を見たことはあるでしょうか。スーツの仕組みは、おそらく腰の高さ以上あるウエットスーツ状の下半身と、上半身はレオタードのような形の、「ツーピース(セパレート)タイプ」です。「ウルトラマン」シリーズでは初めてのスタイルでしたから、インパクトは強かったと思います。

 ただし、このツーピースタイプの「A」が登場するのは第1話および第2話だけで、それ以降は従来のワンピーススーツに変わります。

 そうなると疑問が出てきます。「なぜツーピースタイプを採用したのか? なぜやめたのか?」、これを調べてみました。

 まず、「なぜ、ツーピースタイプを採用したのか?」という疑問です。これには、同じ円谷プロ制作で4か月ほど前にスタートしていた『ミラーマン』が関係していたそうです。

『ミラーマン』は腰に太いベルトを巻いたようなデザインであり、スーツは、このベルト部分でつなぎ目を隠し、上下に分けて作られていました。上下に分けると、ワンピースより脱着がしやすいという大きなメリットがあり、アクターの負担も軽減されて、撮影時間の短縮にもつながったといいます。また、スーツが破損して修復や新調をする際も、上下どちらか取り替えれば済んだはずです。

 そこで、『ウルトラマンA』でもツーピーススーツを導入したとされています。ところが、『ミラーマン』のようにベルトのつなぎ目がないデザインのため、上半身は股間を通した先に付けたフックで止める構造でした。これにより股間から鼠径(そけい)部に段差やすき間が見られ、ビジュアル的に違和感を覚えたというわけです。

 ビジュアルはさておき、問題はそのフックが撮影中にたびたび外れて中断してしまうことでした。また、股間付近の汗が表側に漏れてビシャビシャになり、画面にみっともなく映ってしまいました。そのような不具合が発生したため、ツーピースタイプは見直されたのです。

 それでも、なぜ2話分の撮影でスパッとワンピースタイプに切り替えられたのでしょうか? 最初のスーツアクターだった中西正さんは第1話、第2話のみで、第3話からは武内正治さんに替わっています。つまり、武内さん仕様のスーツを新調するため従来のワンピースタイプに変更したというわけです。

 長く続く「ウルトラマンシリーズですが、ツーピースタイプのスーツは「A」の初代スーツのみのようです。その、2話ぶんでお役御免となったツーピースのスーツは、アトラクション用に使用されたのち、第40話に登場する「スチール星人」に転用されています。

(玉城夏)

【画像】この段差が例の…? こちらがくだんの『A』第1話、第2話を収録したDVDのパッケージです

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