「めちゃくちゃな作画だ」←狙ってました 実は演出だったアニメの作画崩壊回
アニメ界隈ではたびたび「作画崩壊」が起きますが、その原因はじつにさまざまです。アニメーター不足やスケジュールの遅延、海外スタジオへの発注、なかには意図的な演出としてわざと作画を崩しているパターンもあります。じつは“演出”だった作画崩壊には、いったいどのようなものがあるのでしょうか。
崩壊作画監督……ってなんじゃそりゃ!

アニメの感想をネット上で語り合うのが当たり前となった昨今、作画の乱れは「作画崩壊」として槍玉に上げられがちです。しかし、そうした風潮を逆手にとり、意図的な作画崩壊で作品を盛り上げたアニメも少なくありません。
2018年のアニメ『魔法少女 俺』は、意図的に作画崩壊回を放送し話題となりました。本作はいわゆる魔法少女ものでありながら、かわいい女の子に変身するのではなく、魔法少女の恰好をした屈強な男に変身して戦っていくギャグ作品です。
問題の作画崩壊は、敵の黒幕が正体を現す第11話「魔法少女☆最終決戦」で起こりました。黒幕は町の至るところに謎のビームを放ち、世界を崩壊させようとするのですが、この崩壊を『魔法少女 俺』では作画をあえて崩し、アニメの世界そのものをめちゃくちゃにすることで表現していました。
どこか懐かしい作画崩壊がつぎつぎと展開され、その際には画面上に「ただ今ストーリー進行上、致し方なく作画崩壊しております。ご了承くださいませ」とわざわざテロップまで流しています。しかもエンディングのクレジットには、この回のためだけに用意されたであろう「崩壊作画監督」なる肩書きが記載されており、視聴者からは「手の込んだ手抜き」などと呼ばれていました。
作画崩壊をネタとして扱ったアニメといえば、『ハッカドール THE あにめ~しょん』も有名です。オタク向けスマホニュースアプリ「ハッカドール」に登場するマスコットキャラクターを主人公に据えたプロモーションアニメで、本作にはオタク心をくすぐる話がいくつもありました。
代表的なのが、第2話「アイドルやらせてください!」です。このエピソードでは、ハッカドールたちが困っているプロデューサーを助けるためにアイドルを目指すことになります。しかし満を持してのライブ会場で披露されたのは、雑な作画でカクカクと踊る彼女たちの姿でした。本来ならば作画に1番気合が入るライブシーンで、あえて作画崩壊を起こすという大ボケをかましたのです。
さらに彼女たちがライブで披露したのは「キャベツ検定」という楽曲で、その歌詞は作画崩壊界隈で有名な『夜明け前より瑠璃色な』の「キャベツ事件」を明らかに意識した内容となっていました。この1曲を聴くためだけでも、本作を観る価値はあるかもしれません。
もうひとつ有名な作画崩壊回が、アニメ『天元突破グレンラガン』の第4話「顔が多けりゃ偉いのか?」です。本作は2000年代を代表する人気ロボットアニメとして知られていますが、第4話は作画が崩れているほか、キャラクターのテンションも他の話と違うということでいまなお語り草となっています。
しかし今石洋之監督がWEBアニメスタイルのコラムで語ったところによると、第4話をはじめ、続く5、6話の作風が他の話と異なるのは意図してやったことなのだそうです。
本作では、1~3話で主人公たちが地下の村から地上へ突き抜けて旅に出るまでを描き、7話以降に人間を地下に閉じ込めていた敵勢力との本格バトルが始まります。当初の予定では、主人公たちが地上に出た後は1話完結エピソードが大量に続くはずでしたが、これは諸事情によって4~6話までに圧縮されました。
そしてこの4~6話は、今石監督のなかで「最も自由な世界」だったといいます。対して7話以降からは気の抜けない怒濤(どとう)の展開が続くため、「バランス的に、ここは意図的にでもいいから絶対に凸凹させておきたかった」と語っていました。そうした考えからあのような作画崩壊回が生まれたのです。
(ハララ書房)