マグミクス | manga * anime * game

『ガンダム』なぜニュータイプパイロットは脅威なのか ←これを技術で実現する試み

かつて空想科学でのみ語られていたものが、技術の進化により現実のものとなる……21世紀を生きる我々の身の回りにもあるお話です。「ガンダム」シリーズで語られる「ニュータイプ」能力の一部も、技術の力で実現されつつあるといいます。

テクノロジーの進化がパイロットを次のステージへ

数多のニュータイプが物語を彩る「ガンダム」シリーズ。「機動戦士ガンダム ニュータイプ伝説ぴあ」(ぴあ)
数多のニュータイプが物語を彩る「ガンダム」シリーズ。「機動戦士ガンダム ニュータイプ伝説ぴあ」(ぴあ)

 宇宙世紀を舞台とした「機動戦士ガンダム」シリーズにおいて、「ニュータイプ」の存在は物語の根幹をなす概念のひとつです。新しい人類のかたちとして描かれるニュータイプは、従来の人間が持ち得ない高度な認識力や直感力、共感能力を備え、それらの特性がパイロットとしての資質に大きく寄与します。彼らは戦場で圧倒的な優位性を発揮し、機体の性能を超越した戦いを可能にする存在でした。

 現実世界においても、このニュータイプ的な能力を技術的に実現しようとする試みが進んでいます。その最たる例が、第五世代戦闘機であるF-35「ライトニングII」の持つセンサー技術とデータリンク能力です。F-35は戦闘機の概念を超えて、まさに「誰もがエースパイロットになれる」機体として、航空戦に革命的変革を起こしつつあります。

 従来の戦闘機では、パイロットが認識できる視界には明確な限界がありました。特に背後は死角となり、敵機が後方に回り込めば、パイロットは感知することが困難です。そのため、空戦では「相手の背後を取る」ことが決定的な戦術として機能してきました。

 しかし、F-35にはこの伝統的な戦術を無効化し得る能力が備わっています。それが、電子光学分散開口システム(EO-DAS)です。EO-DASは機体各所に配置された赤外線センサーによって、全方位の監視を可能にするシステムで、このセンサー群は機体周囲360度の空間をリアルタイムでスキャンし、航空機の存在を自動的に監視します。

 さらに、F-35のヘルメットマウントディスプレイシステム(HMDS)は、このEO-DASが収集した映像をバイザーに投影します。HMDSを装着したパイロットは機体の死角を透かして外部を見るかのような視界を得ることができ、たとえば、パイロットが下を向けば、機体の床越しに地上が見えるのです。これにより、機体の周囲すべてが「視界内」となり、「従来のような死角」は、論理的には生じないことになります。

 ニュータイプの特徴として、感覚を通じた相互理解や、意思疎通の容易さが挙げられます。彼らは戦場において、言葉を超えた共鳴によって僚機と連携し、統制の取れた戦闘を行うこともあります。

 F-35は、このニュータイプ的な能力を「ネットワークを中心とする戦闘の概念」を通じて実現します。F-35が持つ多機能データリンク(MADL)は、僚機や友軍とのあいだで膨大な情報をリアルタイムで共有できる高度な技術で、このシステムにより1機のF-35が取得した敵機の情報は瞬時に他のF-35や、さらには地上の指揮所や他の航空機とも共有されます。つまり、個々のパイロットが独立して戦うのではなく、ひとつの「戦闘システム」として作戦を遂行することが可能となるのです。これは、ニュータイプ同士が戦場で自然と意思を通じ、共通の戦術認識を持つ様子と極めて類似しているといえるでしょう。

 かつて、戦闘機パイロットはエリート中のエリートとして選抜され、厳しい訓練を受けた者だけが戦場に立つことを許され、またそのなかでも天才的能力を持った一部のパイロットのみがエースとなることができました。しかし、F-35の高度なアビオニクスとセンサー技術は、パイロットの技量の差を補い、誰もが「ニュータイプ的な」能力を持つかのように戦える環境を提供するのです。

 F-35のEO-DASによる全方位感知、HMDSによる視界、MADLによる共感的な戦術共有、これらの要素は、ニュータイプの特性をテクノロジーによって実現し、戦闘機の在り方を根本から変えつつあるのです。

(関賢太郎)

【画像】こちらいろんな意味で物語を彩ったニュータイプ美女&美少女です(8枚)

画像ギャラリー