昭和ウルトラマンの「ヒロイン途中退場劇」 ガッカリ展開の背景に“大人の事情”があった?
次々と途中降板するヒロイン、その理由は昭和だから?

続いての『ウルトラマンA』では、「北斗星司」と合体変身することで「ウルトラマンA」になっていた、もうひとりの主役である「南夕子」が番組から姿を消しました。
この男女合体変身は物語の要ともいえる部分です。本作最大の特徴ともいえるでしょう。しかし、「子供が合体変身だとゴッコ遊びに取り入れづらい」「ヒーローとして弱弱しく見える」という意見や、星司と夕子それぞれのドラマを別々に書くのが難しい……という脚本面での問題もありました。
そこでテコ入れとして路線変更がなされます。そして第28話「さようなら夕子よ、月の妹よ」で、夕子は月星人だったという超展開により退場しました。この星司と夕子も前述した『大決戦!超ウルトラ8兄弟』で夫婦として登場しています。
これらの例と若干異なるのが『ウルトラマンタロウ』のヒロインである「白鳥さおり」でしょうか。なぜならばさおりは最後まで作品に登場していました。その代わり、当初の演者があさかまゆみさんだったのに、第20話から小野恵子さんに交代します。こういう途中降板例もありました。
続く『ウルトラマンレオ』では、ヒロインどころかほとんどの初期レギュラーが死亡するという超展開があります。
第40話「恐怖の円盤生物シリーズ! MAC全滅! 円盤は生物だった!」では防衛組織「MAC」が基地ごとメンバー全員死亡、さらに主人公「おゝとりゲン」の心のよりどころであった城南スポーツセンターのメンバーも、円盤生物「シルバーブルーメ」によってヒロインの「山口百子」をはじめほとんどが犠牲になりました。
この大量の退場劇は、オイルショックが引き金で製作費の圧迫による路線変更が原因だったそうです。
ここまで紹介した「ウルトラマン」シリーズ第2期では理由はそれぞれ違いますが、皮肉なことにヒロインである女優が途中降板するというジンクスがありました。この影響は実は第3期にも陰を落とします。
実は第3期の『ウルトラマン80』のヒロインである「UGM」隊員の「城野エミ」も、第43話「ウルトラの星から飛んで来た女戦士」で殉職により退場しました。
この退場理由は、「ウルトラマンシリーズに最後まで出演した女優は大成しない」……というジンクスを気にしたといわれています。これを深読みすれば、第2期でヒロインが全員途中降板したことが曲解されたのでは?……とさえ考えられるでしょうか。
ちなみにアニメ作品だったからなのか、第3期の『ザ☆ウルトラマン』ではヒロインの途中交代はありませんでした。隊長が途中交代したことと、一部のファンから注目を浴びたサブヒロインの「アミア」が登場したくらいでしょうか。
これらのヒロイン交代劇のほとんどが、あやふやな契約だった昭和ならではの出来事だったと思います。現在では契約関係がしっかりしていて、よほどの事態がない限り、作劇上の展開以外での途中降板はありえません。
「ウルトラマン」シリーズの途中降板劇が第2期に集中しているのは、こうした昭和の慣習が原因だと思えます。そういう意味では令和の時代は安心して作品を楽しめる環境にあるといえるかもしれません。
(加々美利治)