説明不足? 難しすぎ? 後に評価が逆転したPS2ゲームの異端児たち…アンサガとか!
「時代が追いつかなかった」という言葉は、たいていは慰めの常套句でしかありませんが、後になって評価が逆転したというケースも見られるものです。ゲームもまたしかり、ちゃんと理解したりやり込んだりした先にしか見えないものも、ままあります。
早すぎた傑作アクション、今でも時代が追いつかないRPG

初代PlayStationは、本格的な3Dゲーム時代の幕開けとなり、ヤンチャで実験的なタイトルが続々と登場しました。続くPlayStation 2(以下PS2)では、やや落ち着いた印象を受けたものの、先を行きすぎたゆえに評価が追いつかず、「発売当時はクソゲー、後に神ゲー」となるような特異なゲームも誕生しています。
その代表のひとつが、2006年9月14日に発売された『ゴッドハンド』(カプコン)でしょう。主人公「ジーン」が「神の右手」を武器に、敵を殴り倒していくアクションゲームで、その高い難易度で広く知られており、イージーでも並のゲームのハード程度の難しさです。プレイヤーの実力に応じて敵の強さが変化し、固定カメラ視点のため後ろから不意打ちを食らいやすく、すぐ袋だたきにされてしまいます。ザコでも異常な強さを誇り、スウェーやバク転による回避が必須です。
ところがそうした硬派さに反して、敵はプロレスラー風の悪魔やゴリラに乗った博士など奇天烈な存在ばかり、技も「ケツバット」「ゴッドジダンダ」といった悪ノリぶりで、プレイヤーを困惑させました。
しかし、上達するほど戦術が広がる設計に気づいた一部のコアゲーマーから評価が変わり始め、「理不尽な難しさ」は「やり応えある絶妙なバランス」に転じました。いまでは高難度アクションの先駆けとして語られ、「時代が追いつかなかった名作」とされています。
一方、いまだに時代が追いつかない印象のあるタイトルが、2002年12月19日に発売された『アンリミテッド:サガ』(スクウェア、現スクウェア・エニックス)です。人気シリーズ第9作として登場し、「これがSaGa? 本当にRPG?」というキャッチコピー通り、従来の概念を一新する内容でしたが、斬新すぎてユーザーがついていけませんでした。
移動は左スティックを一定時間倒し続けるという独自仕様で、「移動できない」と勘違いする人が続出したほどです。戦闘は最大5回の行動を事前に入力し、攻撃は目押しスロットによって発動する「リールシステム」のため、思い通りに戦えないこともあります。
極めつけが成長システムで、シナリオクリア時にランダムに現れるスキルパネルを選び、7×7マスの盤に配置する仕組みで、運と配置次第で結果が大きく変わります。チュートリアルもほぼなく、説明書も親切とはいえないものだったため、多くのプレイヤーが途中で投げ出し、クソゲー扱いされたのです。
しかし、翌年に発売された公式攻略本『アンリミテッド:サガ 解体真書』(KADOKAWA)が、これぞ説明書! といわれるほど充実した内容で、ゲームの奥深さに気づいてハマるプレイヤーが増えていきました。20年にわたる有志の研究も重なり、いまでは「極めれば極めるほど面白い硬派なRPG」として語られるほどです。が、いまだにリマスター版の登場する気配はないことが、独特の立ち位置を物語っています。
そして、2004年1月22日に発売された『ネビュラ エコーナイト』は、フロム・ソフトウェアによるホラーアドベンチャーシリーズの3作目です。発売当初から、クソゲーとまではいわれなかったものの、ファンのあいだでは意見が分かれる作品でした。
評価が割れたのは、前2作の舞台は幽霊屋敷や古い船といったゴシックホラー的だったところ、本作では舞台が近未来の月面基地に移り、SF色が強くなったことが原因のひとつとされています。幽霊との関わりも、心理的恐怖から肉体的な恐怖に変化し、「心拍数が上がりすぎるとショック死する」という仕様も新たに加わりました。
また、幽霊に対抗する手段が乏しく、逃げ回るしかない構造や、もっさりした操作感、難解なパズルも批判の的となりました。ただし時間が経つにつれて、「独立したSFホラー作品」として見れば高く評価されるようになっていきます。
現在では、操作のクセや難易度の高さも「死にゲー」を得意とするフロム作品らしさとして、ファンからはプラスに捉えられるかもしれません。
(多根清史)