原作から「完全逸脱」したマンガ実写化映画 作者「腹を抱えて笑った」
「原作改変」が話題になりがちな昨今ですが、過去には原作が影も形もなくなった実写化作品がいくつもありましたので紹介します。
なぜか冴羽リョウが春麗に変身する

昨今は原作マンガが実写化される際の改変の度合いが、話題になることが増えました。場合によっては、SNSで炎上することもしばしばあります。しかし、過去には原作改変どころか、原作を完全に「逸脱」した実写化作品がいくつもありました。
●『シティーハンター』
北条司先生の『シティーハンター』はこれまで何度か実写化されていますが、1993年にジャッキー・チェンさん主演で映画化された作品は、原作からの逸脱ぶりが話題になりました。
主人公「冴羽リョウ」のイラストが写し出された後、まったく似せる気のないジャッキー・チェンさんが「オレはリョウ。またの名をシティーハンター」と挨拶するオープニングから脱力しますが、全編この調子です。
相棒「槇村(演:マイケル・ウォン)」の死はコントのように描かれますし、ジャッキーさんが大流行中だったゲーム『ストリート・ファイターII』の「エドモンド本田」や「春麗」に変身して戦うなど、コミカルなアクション映画というよりギャグ主体のパロディー映画に近い印象を受けます。
オープニング以外は『シティーハンター』だと分からない作品ですが、北条先生は「映画.com」のインタビューで「試写室でアシスタントと一緒に見て、腹を抱えて笑ったのをよく覚えています」と語っていました。
●『花のあすか組!』
高口里純先生の大ヒットマンガ『花のあすか組!』は、不良少女「九楽あすか」と女子中学生で構成される裏番長組織「全中裏」との戦いを描く少女アクションです。
1988年に制作された小高恵美さん主演のドラマ版は、いきなり第1話で武将の格好をした女子中学生が馬に乗って学校に攻め込んでくるなどテンションの高い怪作でしたが、同年に公開されたつみきみほさん主演の映画版は、それをはるかに上回るすさまじい原作からの逸脱が起きていました。
まず、舞台が現代ではなく近未来という時点で、原作とまったく異なります。荒廃した街でストリートギャングと少女秘密結社と悪徳警官の三者が抗争するなか、どこにも属さないあすかがひたすら暴れ回る物語になっていました。映画『ストリート・オブ・ファイヤー』や、『ウォリアーズ』からの影響が見られ、あすかの服装は『AKIRA』からの影響も感じます。
つみきさんのキレの良いアクションと、ローリング・ストーンズの名曲「サティスファクション」が印象的で、高口先生もパンフレットのインタビューで「とても満足しました」「原作とは最初から別物と思っていますから、あすかがかっこ良くてステキ!だし、肩で風きって出てきちゃったぐらいです」と絶賛していました。
●『ア・ホーマンス』
原作から逸脱した実写化作品のきわめつけは、狩撫麻礼先生が原作、たなか亜希夫先生が作画のマンガを、松田優作さんが監督と主演を兼ねて実写化した1986年の映画『ア・ホーマンス』です。
原作は、新宿で浮浪者たちと暮らす記憶喪失の男が記憶を取り戻すことを拒み、愛する妻との暮らしを捨てて真の自己実現の旅に出るという、ヒューマンドラマです。しかし、映画は「新宿に記憶喪失の男がやってくる」という部分だけを使った、アクション作品になっていました。
アクション映画ではあるものの、監督を務めた松田優作さんの考えでアクション描写やドラマパートが極端なほど抑制的に演出されており、単純なストーリーですがよく分からない作品になっています。映画『ターミネーター』に影響された部分や、後の北野武作品に通じる部分もあるので、気になる方はぜひご覧ください。
※冴羽リョウの「リョウ」は、正しくは「けものへん+うかんむりなしの寮」。
(大山くまお)
