『ウルトラQ』冒頭の「ぐるぐる文字」どうやって作ったの? シンプルなのに「スゴイ効果」
TV番組は、最初に視聴者に与える印象やインパクトが重要です。その点でいえば、ウルトラシリーズのいくつかのオープニング映像は今でも記憶に残る人が多く、大きな成功を収めたといえるでしょう。印象に残った「回るタイトル文字」の秘密とは……?
回っていたのは、「糊」?

1966年に放送されたウルトラシリーズ第1作『ウルトラQ』が、2025年4月から毎週金曜日18:35よりNHK BSプレミアム4Kで放送中です。同作のオープニング(OP)映像冒頭のタイトル画面に見入ってしまい、今も印象に残っている人は多いのではないでしょうか。
「ドン! カーッ! キュルルー」という不気味な音に合わせて、マーブルな模様がゆっくりと回り、徐々に「ウルトラQ」のタイトルロゴが形成されていきます。これは約60年前の特撮技術による映像ですが、「どうやって作ったのだろう?」と、不思議に思う人は多いでしょう。CGなどない時代なので、職人がアナログ作業で作りました。
『ウルトラQ』タイトル映像の作り方は……まず、容器のなかに工業用の糊を敷き詰め、絵の具を垂らしてマーブル状の模様を付けます。表面に粉末でタイトルロゴを描きます。容器の底面にはふたつの「かくはん機」を仕込んでいます。これをゆっくり回転させて文字を崩す様子を撮影し、映像を逆再生させると、模様が回りながらタイトルロゴが完成するように見えるというわけです。
同様の仕掛けを再現した様子を、ブログや動画サイトなどで見ることができます。仕組みを知ってしまえば、やることは単純に思えますが、特撮の現場では高いレベルの技術とクオリティーが求められます。当時の一般的なTV番組ではタイトル映像に手間と技術を注ぐことはしませんでしたから、視聴者は不思議な特撮の世界に引き込まれたでしょう。これは『ウルトラQ』の奇策でした。
誰の発案だったのか?

この、「インパクトの強いOPを作る」という発想は、スペシウム光線の「線」を手書きしたことで有名な光学合成技師の「飯塚定雄」さんが推したとか。当時、洋画で独創的なタイトルバック映像を次々に作っていたグラフィックデザイナー「ソール・バス」氏(ヒッチコック『サイコ』などを手がける)の作品を見てパッションを感じたようです。
飯塚さんは、あるインタビューで、特にソール・バス氏が作る映画のOPは、「上映が始まると最初にタイトルがバーンと出る。映画はそこから始まる。音楽もそこから入る。だからタイトルは目立たさなければならない」、などと、作品冒頭の演出の重要性を話しています。また、この発想が、『ウルトラマン』のOPで怪獣のシルエットにスタッフやキャストの情報を載せるというアイデアにもつながっているそうです。
この「OPタイトル映像」は、ウルトラシリーズの定番として続いてゆきます。番組最初に目を奪われる映像を流せば、そして最初の映像を毎週楽しみにしてくれれば、チャンネルは変えないし視聴率につながる。そんな意図がありました。
シリーズ第3弾『ウルトラセブン』で第13話まで使用した、カラフルな砂から徐々にロゴが浮かんでくるOPは、台の上にカラーの砂を用いて描いたタイトルロゴを細かく揺らして崩しました。この映像を逆再生させたものです。
『帰ってきたウルトラマン』は、不思議な映像というより、カッコイイ印象が強くなります。担当した光学撮影技師の中野稔さんの話をまとめると、「タイトルロゴは、麦球(小型の電球)を光らせた。光ファイバーを使いたかったが高価でできなかった。バックはスパンコールを使ったと思う。万華鏡の鏡を使用した」とのことです。
ウルトラマンシリーズに習い、円谷プロの特撮番組「怪奇大作戦」、「ファイヤーマン」なども凝ったOPタイトルを制作しています。『ウルトラQ』の放送は、TV創世記の1966年でしたが、「OPでインパクトを与える」という手法は、その後、特撮はもちろんドラマなどでもよく作られました。そうした演出のルーツに『ウルトラQ』があるといってもおかしくはないでしょう。
(玉城夏)



