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企画書一枚でアニメ『ドラえもん』を救った男 「高畑勲」の隠れた功績とは?

匿名で参加した伝説の『ルパン三世』

『ルパン三世』第1シリーズ全23話を収録した、「ルパン三世 first TV. BD-BOX」(バップ)
『ルパン三世』第1シリーズ全23話を収録した、「ルパン三世 first TV. BD-BOX」(バップ)

 高畑監督の名前がクレジットされていない人気アニメとして、『ルパン三世』(日本テレビ系)も挙げられます。1971年に放映された『ルパン三世』第1シリーズ(日本テレビ系)は、大人向けのハードボイルドな作品としてスタートしました。しかし、視聴率は低迷し、演出を任されていた大隅正秋監督は途中降板することになります。

 代わって『ルパン三世』第1シリーズの演出を中盤から手がけたのが「Aプロダクション演出グループ」でした。グループ名義となっていますが、東映動画(現在の東映アニメーション)を辞めて「Aプロダクション」に移ってきた高畑監督と宮崎駿監督のことです。このころの高畑監督は『長くつ下のピッピ』のアニメ化の準備をしていたところですが、原作者アストリッド・リンドグレーンからのOKが出ずに力を持て余していた時期でした。

 高畑&宮崎コンビが演出したことで、『ルパン三世』はグッとコミカルな作風となりました。視聴率を挽回するには至りませんでしたが、「7番目の橋が落ちるとき」「タイムマシンに気をつけろ!」「ジャジャ馬娘を助け出せ!」などの傑作エピソードを残しています。

 若き日の高畑&宮崎コンビの参入がなければ、アニメ『ルパン三世』が伝説化し、これほどまでのロングラン人気を誇るシリーズにはなっていなかったかもしれません。

『となりのトトロ』の原型となった人気作も

 長編監督デビュー作『太陽の王子 ホルスの大冒険』(1968年)が興行的に失敗した高畑監督は、東映動画を辞め、『長くつ下のピッピ』をアニメ化しようとしたのですが、原作者からの許諾は結局出ませんでした。そこで、女の子がひとり暮らしをしているという設定を流用して制作したのが、高畑勲監督、宮崎駿脚本による『パンダコパンダ』(1972年)です。

 折からのパンダブームにあやかった『パンダコパンダ』は大好評を博し、続編『パンダコパンダ 雨ふりサーカスの巻』(1973年)も制作されています。人気者となった巨大なパパンダのビジュアルは、のちに宮崎監督が手がけた『となりのトトロ』(1988年)のトトロにそっくりです。『パンダコパンダ』が成功したからこそ、『となりのトトロ』も誕生したのです。

 また、『ホルスの大冒険』に登場する清純さとミステリアさの二面性を持つヒルダは、ジブリヒロインの原型となっています。久石譲氏が宮崎アニメの音楽を担当するようになったのは、『風の谷のナウシカ』のプロデュースを担当した高畑監督の抜擢があったからです。

「高畑勲展」のオープニングセレモニーに出席した爆笑問題の太田光さん、高畑監督とは遠縁の関係にあるという映画監督の岩井俊二監督は、『ホルスの大冒険』をはじめとする多くの高畑アニメから多大な影響を受けたと語っています。再放送で『アルプスの少女ハイジ』や『赤毛のアン』などを観た人も多いことでしょう。

 7月15日(火)からはNetflixで『火垂るの墓』の国内配信が始まります。高畑アニメで育った世代にとっては、平和な日常生活を過ごすことの喜びを改めて実感させてくれる機会になるのではないでしょうか。

(長野辰次)

※「高畑勲展 日本のアニメーションを作った男。」は、東京・麻布台ヒルズギャラリーで2025年9月15日(月)まで開催。詳細は「麻布台ヒルズ ギャラリー」で検索して公式サイトをご参照ください。

【画像】「えっ、現場にいたの?」 これが高畑監督が関わっていた大人気アニメ作品です(5枚)

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長野辰次

フリーライター。映画、アニメ、小説、マンガなどのレビューや作家インタビューを中心に、「キネマ旬報」「映画秘宝」などに執筆。現在公開中の『八犬伝』(キノフィルムズ配給)の劇場パンフレットなどにもレビューを寄稿している。

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