「本物より不気味」菅野美穂初主演『イグアナの娘』 娘を愛せない母の結末が衝撃的
ドラマ『イグアナの娘』は、自分の正体を「イグアナ」と思い込む女子高生が主人公という、異色の設定が話題となりました。放送当時は鏡に映る衝撃的な姿ばかりが印象的に残った人も多いかもしれませんが、あの物語がどのような結末を迎えたのか覚えていますか?
リアルな「イグアナ」フェイスに衝撃を覚えたあの頃

2025年8月8日(金)、背筋さんのホラー小説を実写化した映画『近畿地方のある場所について』が公開されます。俳優の赤楚衛二さんとともにW主演を務める菅野美穂さんは、1993年にTVドラマ『ツインズ教師』で女優デビューを果たし、1996年放送の『イグアナの娘』で連続ドラマ初主演を飾りました。
なかでも『イグアナの娘』は、自身を「イグアナ」だと思い込む女子高生という役柄が強い印象を残しましたが、この物語がどのような結末を迎えたのか覚えていますか? 放送からおよそ30年が経った今、改めて本作の最終回を振り返ります。
萩尾望都さんの同名マンガを原作とする『イグアナの娘』は、母親に愛されない娘と、娘をどうしても愛せない母親の関係を描いた愛憎劇です。母親の「ゆりこ(演:川島なお美)」の目には、娘の「リカ(演:菅野美穂)」の姿がイグアナにしか見えず、ちゃんと人間に見える妹の「まみ(演:榎本加奈子)」ばかりをかわいがっていました。
ある日、「私にはリカがどうしても人間に見えないの。まるでガラパゴスのイグアナにしか見えないのよ」と叫ぶゆりこの声を耳にしたリカは、自らイグアナについて調べ、その姿に衝撃を受けて気を失ってしまいます。そしてそれ以降、鏡に映る自分の姿がイグアナに見えるようになり、自分は幸せになれないと深く思い悩むようになるのです。
この鏡に映るイグアナの造形があまりにもホラーで、当時大きな衝撃を受けた視聴者も多かったのではないでしょうか? リアルなイグアナのほうが、よほど愛嬌があると感じるほどの迫力で、ネット上でも「イグアナの顔がリアルすぎて怖かった」「幼少期のトラウマドラマ」などと今なお語り草になっています。
では、そんな母娘の軋轢や葛藤は、どのように決着を迎えたのでしょうか? 結局ゆりこがリカに愛情を示すことはありませんでしたが、最終回で思わぬ形の「母の行動」が描かれます。道路へ飛び出した少女にリカの姿を重ねたゆりこは、とっさに身を投げ出して少女を救い、命を落としてしまうのです。
そして亡くなった彼女の顔を見たリカは、衝撃を受けます。ゆりこもまた、自分と同じイグアナの姿をしていたからです。
その後、リカは父親「正則(演:草刈正雄)」から、かつてガラパゴス諸島でイグアナを助けたというエピソードを聞かされ、そのイグアナこそゆりこだったと気付きます。彼女は正則に恋をし、魔法使いに頼んでイグアナ時代の記憶を封じる代わりに人間の姿を手に入れたのでした。つまりリカのことがイグアナに見えていたのは、自分の正体が露見することへの無意識の恐怖が原因だったのです。
こうして初めて母の苦しみを理解したリカは、かつて親友から聞いた「海はすべての生き物が流した涙でできており、人は何かを忘れるために海を見に行く」という言葉を思い出し、ゆりこの悲しみやつらさが癒えることを願って遺骨を海に散骨しました。それ以来、リカは自身の姿がイグアナに見えることもなくなり、物語は愛する人と穏やかに暮らすハッピーエンドで幕を閉じます。
放送当時はその異様な設定やビジュアルのインパクトから、トラウマドラマのひとつとして語られることも珍しくありませんでした。しかし改めて振り返ると、母娘関係や自己肯定感の問題など、じわじわ心に刺さるテーマが詰まっていることに気付かされます。
90年代ドラマの空気をまといながらも、普遍的な問いを投げかける『イグアナの娘』は、令和の今こそ見返す価値があるのかもしれません。
(ハララ書房)

