『ガンダム』アムロ、『呪術』虎杖… ファンを唸らせる「前作主人公」再登場の最適解とは?
「あんなに強かったのに……」。続編における「前作主人公」の再登場は、ときにファンの間で波紋を広げます。一歩間違えれば作品全体の評価も左右しかねないこの難題を、過去の名作たちはどのようにして乗り越えてきたのでしょうか?
強すぎても弱すぎてもいけない「格」の難問

シリーズ作品において、「前作主人公」はどのような立ち位置に置かれるべきなのでしょうか? 現在放送中のアニメ『鎧真伝サムライトルーパー』第5話では、かつての主人公「真田遼(CV:草尾毅)」が意外な形で登場し、大きな話題になりました。この展開をきっかけに、前作主人公の扱いの難しさが改めて注目を集めています。
前作の顔ともいえる人物は、弱すぎれば積み重ねてきた格を損ない、強すぎれば現主人公の活躍を奪いかねません。例えば『BORUTO-ボルト- -NARUTO NEXT GENERATIONS-』では、物語のインフレや次世代への継承という構図のなかで、「ナルト」や「サスケ」がかつての無双ぶりを発揮できず、苦戦を強いられる場面が目立っていました。
往年のファンからすれば受け入れがたい展開ですが、彼らが最前線に立ち続ければ「新世代の物語」が成立しにくくなるという事情もあります。前作主人公の格を保ちながらパワーバランスを調整することの難しさを示す、象徴的な事例といえるでしょう。
ではシリーズを継承する作品において、理想的な前作主人公の在り方とは何なのでしょうか?
ひとつの理想形としてよく語られるのが、『機動戦士Zガンダム』における「アムロ・レイ」です。「一年戦争」の英雄となった彼は、ニュータイプを危険視した地球連邦政府によって約7年間にわたり、事実上の軟禁状態に置かれていました。
また「ララァ・スン」の一件が心の傷になるなど、さまざまな事情が重なってモビルスーツ(MS)に乗れない状況が続きます。しかし「カミーユ・ビダン」らとの出会いをきっかけに再び操縦桿を握ると、卓越した戦闘力を発揮し、ブランクを感じさせない実力を見せつけました。
そのまま「グリプス戦役」に本格参戦すれば圧倒的な存在になりかねない状況でしたが、アムロは最後まで地上での支援に徹します。戦う場所を限定することで、物語の均衡を保ちながら変わらぬ実力を示す、前作主人公の格を守る手法として、きわめて理想的な描き方といえそうです。
●かつての主人公が「憧れの存在」へ
また、前作主人公を新主人公にとっての「憧れの存在」に位置づけるのも王道のパターンです。『デジモンアドベンチャー02』では、かつての主人公「八神太一」が中学生となって登場しますが、デジタルワールドに突如現れたダークタワーの影響でアグモンたちが進化できなくなり、代わりに新世代の子供たちが最前線に立つことになります。
しかし完全に物語から退くわけではなく、太一を新主人公「本宮大輔」にとっての「憧れの先輩」として描き、新世代を支える立場で物語に関わり続けました。年長者という明確な格を保ちながら、精神的支柱としての存在感を際立たせたのです。
そして『遊☆戯☆王デュエルモンスターズGX』においても、前作で伝説の決闘者(デュエリスト)となった「武藤遊戯」は、新主人公「遊城十代」にとって雲の上の存在でした。ただし物語に大きく関わることはなく、最終話で十代にデュエルの楽しさを思い出させる役割として登場します。両者が一歩も譲らぬ戦いを繰り広げながら、あえて勝敗は明示しないという粋な演出は、多くのファンを唸らせました。
ちなみに現在「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載中の『呪術廻戦≡(モジュロ)』では、前作主人公の「虎杖悠仁」がファンを沸かせたばかりです。あえて詳細は伏せますが、本作における虎杖の描き方は「理想の前作主人公すぎる」と話題を呼んでいます。
新世代を立てながらも、要所で圧倒的な存在感を放つ。出番の多さではなく、その「格」をいかに守るかが前作主人公を扱ううえで1番大切なのかもしれません。
(ハララ書房)