金ロー『借りぐらしのアリエッティ』 ミニチュア化された宮崎駿ワールド
米林宏昌監督のデビュー作『借りぐらしのアリエッティ 』は、興収90億円を突破した大ヒット作です。企画・脚本を担当した宮崎駿氏の影響力も感じさせますが、それまでのスタジオジブリ作品にはなかった独自要素も、絵コンテから手掛けた米林監督は仕込んでいました。改めて見直すと、宮崎駿ワールドがミニチュア化された、かなりユニークな作品だったことが分かります。
主人公は身長10センチの美少女

身長10センチの小さな、小さな美少女が活躍する劇場アニメ『借りぐらしのアリエッティ 』(2010年)が、3年ぶりに地上波でTV放映されます。放送枠は2020年8月28日(金)21時からの「金曜ロードSHOW!」(日本テレビ系)です。
スタジオジブリが制作した『借りぐらしのアリエッティ』は、英国の児童文学『床下の小人たち』が原作です。若い頃に『床下の小人たち』を愛読した宮崎駿氏が、企画と脚本を担当。スタジオジブリの精鋭アニメーターたちのなかでも、ひときわ優れた才能を見せていた米林宏昌氏が監督に抜擢され、監督デビューを果たしました。
声優には、志田未来さん、神木隆之介さんら人気キャストを起用。興収92.6億円という大ヒットを記録しました。フランス出身のセシル・コルベルさんが奏でるケルティックハープの音色も印象的です。
生きる希望を失った少年と小人少女との出会い
ストーリーは、スタジオジブリらしい「ボーイ・ミーツ・ガール」ものです。12歳になる人間の少年・翔(CV:神木隆之介)は、心臓の手術を1週間後に控え、大伯母が暮らす東京郊外の屋敷でひと夏を過ごすことになります。屋敷に到着した翔は、庭の草むらに潜む小さな小人を目撃します。それが、人間からこっそり食糧や資材を「借りぐらし」する一族の少女・アリエッティ(CV:志田未来)でした。「人間に姿を見られてはいけない」と親から厳命されていたアリエッティと生きる希望を失いかけていた翔との、出会いと別れの数日間が描かれます。
14歳になるアリエッティが、父親のポッド(CV:三浦友和)に連れられて、「借り=狩り」に向かうシーンに、わくわくします。母親のホミリー(CV:大竹しのぶ)の心配をそよに、アリエッティは髪をクリップで束ね、初狩りにやる気満々。ポッドは両手両足に小さく切った粘着テープを貼り付け、高層ビルのようなテーブルの脚をペタペタと巧みに登っていきます。宮崎駿作品でおなじみの浮遊シーンとは異なるリズムの上下運動が、楽しげに描かれています。
物語の前半、アリエッティの姿が、ティッシュペーパーの影や網戸越しにしか翔の目に映らないのも、いい感じのもどかしさがあります。翔のご先祖の特注品である「ドールハウス」のディテールぶりにも目を奪われます。小さきものへの愛情が、たっぷりと注がれた作品になっています。