「炎と時間」が最大の敵…? 35周年を迎えた特撮界「大人すぎる実験作」の真実
リアルな難敵難題に立ち向かうヒーロー

『特警ウインスペクター』は、アクション性も高く、従来のヒーロー像を色濃く残した作品です。「ポリスロボ」による銃撃戦やカーチェイスは画面も派手でした。ただし、敵は怪人ではなく、感情を持った犯罪者やテロリストです。ヒーローの役割は敵を倒すことではなく、法に基づいて逮捕することでした。そのため、ヒーロー番組でありながら刑事ドラマの趣が強い作品となっています。
『特救指令ソルブレイン』は、その路線を引き継ぎつつ、人命救助へとさらに重心を移した作品です。ソルブレイン隊員たちは化学工場や火災現場、事故現場へと急行し、戦闘よりも救助や消火といった処理を優先します。
彼らが立ち向かう敵は、炎や建物の崩落などが襲う現場、そして刻々と迫る時間といった「状況」でした。「命だけでなく人の心も救う」という使命が強調され、社会派ドラマとしての色合いはより濃くなり、子供向け番組としてはいっそう地味な印象を残しました。
続く『特捜エクシードラフト』では、再び戦うヒーロー像が前面に押し出されます。「トライジャケット」という特殊スーツを着用し、犯罪や災害に立ち向かう姿は、より分かりやすいヒーロー像への回帰といえるでしょう。
超常現象が起こり、タイムマシンが登場するなどSF要素も導入され、子供層を意識した作りになりました。ただし、対峙する相手は単純な悪ではなく、過去の事件に囚われた人物や歪んだ正義を信じる人間です。ヒーローは事件を止めるだけでなく、「その先をどうするか」まで考える存在として描かれていました。
3作を並べてみると、それぞれの役割の違いも明確です。『ウインスペクター』は事件を制圧する警察ヒーロー。『ソルブレイン』は命を救うため時間と戦うレスキューヒーロー。『エクシードラフト』は人間の事情と向き合う特捜チームでした。
いずれも刑事ドラマ的な構造を持ちながら、悪役の背景に哀愁が漂うことが多く、事件が解決してもどこか割り切れない後味の悪さを残します。大人向けで子供には難しいと言われ、視聴率もさほど上がらず、玩具の売上げも落ち着いたそうです。
しかし、この挑戦は決してムダではありませんでした。レスキューポリスシリーズの功績は、「怪人を倒すことだけがヒーローの仕事ではない」と示した点にあります。止めること、守ること、決断すること。人が避けがちな役割を引き受ける責任と、その勇気こそがヒーローとされるべき姿なのだと、このシリーズは静かに語っていました。
ヒーローを社会のなかで動く存在として描いたレスキューポリスシリーズの功績は、『デカレンジャー』の警察組織や、平成仮面ライダーに増えた「迷うヒーロー像」へ受け継がれたと考えられるのです。
(玉城夏)



