「異世界作品への偏重」からの脱却を目指すKADOKAWA 本当の課題は「仕組み」にある?
高度な要求を突き付けられている?
ではなぜKADOKAWAは異世界作品への偏重からの脱却を目指さなければいけないのでしょうか。それは、いまの異世界作品が生み出す市場と利益では、KADOKAWAの巨体を支えられなくなっているからだと考えられます。
オーバーラップやTOブックスは十分な売上と利益を達成していますが、KADOKAWAに要求されているのは2000億、3000億を超す売り上げと、それにふさわしい利益です。巨大メディアミックス企業がこの売り上げを達成するためには、常時複数のアニメをヒットさせる必要があるでしょう。
それは「不可能」と言い切ってよいほど困難です。かつて『葬送のフリーレン』が金曜ロードショーで1話を放送し、その後の放送時間枠を23時からに設定することにより、深夜にアニメを見る習慣を形作りました。いまは23時半からの枠でもアニメが放送されるようになり、現在は『スノウボールアース』が人気を集めています。このように、良質な作品を用意すればヒットをある程度デザインすることは可能です。
「大ヒット」生み出す仕組みづくりがカギに?
しかし、毎四半期に複数のアニメをヒットさせ、原作のライトノベルやコミカライズも絶好調…という状況を作り続けるのは険しい道です。KADOKAWAは原作者を増やすべく、カクヨムという小説投稿サイトを運営していますが、後にアガサ・クリスティー賞の大賞を受賞した『同志少女よ、敵を撃て』(著:逢坂冬馬)が掲載されていたにも関わらず、出版のチャンスを逃しています。
他にも、今後大きなメディアミックス展開が期待される作品が複数の他社から書籍化となっており、現状では「傑作」を見い出す仕組みはあっても、「大傑作」を見つけるのが難しいという問題を抱えています。
アニメの大ヒットにつながる「大傑作」を見逃さない仕組みは、大量のレーベルを抱えるKADOKAWAだからこそ作れるはずです。このことが、今後KADOKAWAが向き合うべき大きな課題と言えるのではないでしょうか。
(早川清一朗)



