NHK放送のアニメ『子鹿物語』、心揺さぶる悲劇的な結末 もう見ることは難しい…
『子鹿物語』は1983年から1985年にかけてNHKで放送されたTVアニメです。米国の作家、マージョリー・キナン・ローリングスの小説を原作に、少年と小鹿の出会いと自然を相手にした過酷ながらも楽しい生活、そして悲劇的な結末までを描きました。
アニメ『子鹿物語』のあらすじ
1980年代のTVアニメには、土・風・潮の香りが匂いたつ作品がたくさんありました。『ニルスのふしぎな旅』『ふしぎな島のフローネ』など多くの名作が存在し、今では配信やDVDなどで見ることができるようになっています。
しかしなかには、見るのが難しい作品も存在しています。1983年から85年にかけてNHKで放送された『子鹿物語』はその筆頭とも言えるでしょう。本作はアメリカの作家マージョリー・キナン・ローリングス氏が手掛けた、同名の小説を原作として制作されました。
舞台は、1807年のアメリカ・フロリダ州。イギリスとの独立戦争に勝利したアメリカは、ネイティブ・アメリカンの方々を排除しつつ西方、南方に向けて勢力を拡大し、多くの開拓者が生きる術を求めて入植していた時期に当たります。
主人公のジョディは、開拓者の息子として生まれた12歳の少年です。両親と共に大自然のなかで、それほど豊かとはいえませんが、同世代の体の弱い親友フォダウィングと穏やかな日々を過ごしていました。
そんなある日、父親が毒蛇に咬まれる事件が起こります。そのとき父親は応急処置のため手近にいた女鹿を殺して肝臓を引きずり出し、かまれた傷口に押し当てたのです。そのとき女鹿のそばにいたかわいらしい子鹿をジョディが飼うことになり、のちにフラッグと名付けられたのです。
ちなみにフロリダ州は現代でこそディズニー・ワールド・リゾートが存在する観光地ではありますが、今なお獣害は絶えません。2016年には2歳の子供がホテルの前の人工湖に住んでいたワニに水中へと引き込まれて死亡する痛ましい事件も発生しています。開発の進んでいない時代の危険性はどれほどのものだったのか、現代人には想像すら付かない危険に満ちていたのでしょう。『子鹿物語』でも巨大な熊「スルーフット」やオオカミとの、生存を賭けた厳しい戦いがしばしば描写されています。
ジョディと子鹿のフラッグはまるで兄弟のように仲良く暮らしていましたが、フラッグの成長と共に、貴重な食料を食べてしまうなど徐々に一家の生活を圧迫していきます。